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地域ブランド「玉造温泉」で攻める 危機からの再生 後編
地域団体商標を取得し、玉造温泉の街づくりが始まった。温泉街に賑わいを取り戻すため守りから攻めに転じる。地域の宝を掘り起し、地域の人たちが一体となった取り組みに迫る。 前編はこちら<平成27年度制作>
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賑わいの再生に向けて攻める
衰退の一途をたどっていた温泉街が、地域団体商標を登録し、さらに地域ブランド化の取り組みを進めて「賑わいの再生」に成功しました。現在、年間110万人が観光客が訪れる島根県の玉造温泉。
「個々の経営ではなく玉造温泉という組織での経営・運営」を行い温泉街再生に向けて動き出しました。
着目したのは「地域団体商標」。この登録制度で地名を含む商品やサービスの名称を適切に保護し、模倣や粗悪品(サービス)から価値や信頼を守る事が出来ます。
地域団体商標で「玉造温泉」の名称を守り、いよいよ地域ブランド化を目指し攻めに転じます。
全国5000とも言われる温泉地との差別化を明らかにするため、玉造温泉のポテンシャルの再確認から始めました。歴史を紐解いていくと8世紀、奈良時代に書かれた「出雲国風土記」では「かたちきらきらしい」という肌に良い湯、万病に効く「神の湯」と紹介されています。太古から温泉の存在を知られ、効能が素晴らしいものだった事が伺えます。「かたちきらきらしい」「神の湯」というキーワードをもとに、玉造温泉は「美肌効果を謳うこと」「ターゲットは女性客に絞る」というコンセプトで話し合いを進めた結果「美肌・姫神の湯 玉造温泉」という名称を旗印に街づくりをすることに決定しました。
地域の宝を掘り起し賑わいづくりへ
街づくりという視点から観光客の囲い込みを改めた玉造温泉。宿泊客が外出して、そぞろ歩きの中で温泉街を魅力的に感じるような仕掛け作りを始めました。
シャッターの閉まった街並みにどう賑わいを持たせるのか。玉造ならではの地域の魅力を洗い出し、検討していくと、「昔から玉造にあるもの」にたどり着きました。
目を付けたのは、玉作湯神社にもともとあった「願い石」。その言い伝えをヒントに「願い石」の不思議な力のおすそ分けを頂く「叶い石」をつくり、オリジナルのお守りを作りました。
それが、女性客の心をしっかりと掴み、今では「願い石」に祈りを込める長い行列ができるようになりました。
「美肌・姫神の湯 玉造温泉」ならではの名所、名物の誕生を皮切りに、「カメラお助け台」や「おしろい祈願札」「おすそ分け茶屋」「恋叶いの素」(鯉のエサ)を作るなど持っていた資源を明確化したことで、新しい活動につながり、玉造温泉の地域ブランド化の大きな要素となりました。
活動の成果は数字に表れます。1998年に年間80万人だった観光客は、2014年に110万人にまで増加し、地域の皆さんが観光客の賑わいを実感として感じられるようになりました。
出雲の風土と「姫神の湯」というコンセプトにあわせて神話モニュメントや足湯の設置が進められ、歩行空間を含めた環境整備といったハード面の充実も図られました。
ブランド化の基軸・武器
「玉造温泉のお湯がその昔から美肌効果のある素晴らしいものだった。」
その事を確認するため、お湯を分析・実験した結果、美肌効果があることが化学的に分かりました。本物の「美肌の湯」であることを明確にできたことで、地域ブランド化の基軸が「お湯」そのものであり、それが最大の武器になるという事を周藤さんたちは知る事となりました。
各旅館で湯めぐり券を発売し、街の立ち寄りスポットでは、温泉をお持ち帰りするための「美肌温泉ボトル」を無人販売。温泉水専用のフェイスパックタオルなどのグッズ開発や女性客の人気を集める「温泉を使用したコスメ商品」の開発にも成功。そして、温泉街にコスメショップを構え、旅館内にはあえてコスメ商品を置かずに観光客の街歩きに繋げたりと細やかな戦略で、温泉街の賑わいをつくり出しています。これらの商品は、玉造温泉の効能や名前を広める大切な要素となっています。
こうした取り組みは、街づくりとなり、地場産業、雇用の創出につながりました。
「美肌の湯」の広報に一役買っているのは、温泉街で働く若い女性たち。女性客をターゲットとするなら、経営者よりも宿でお客様に最も近い立場の女性からのPRが効果的であり、温泉街の女性スタッフ「姫神ガールズ」が全国に出かけ、広報活動も行っています。
彼女たちが持って行くものはスプレー式の温泉水ボトル「美肌温泉ボトル」。それは美肌を謳う玉造温泉が誇る温泉水をみなさんに試してもらうため。こうして「美肌・姫神の湯 玉造温泉」の名は、全国に広まっていったのです。
街に対する意識の変化
閑散とした街から、賑わいのある温泉街になった玉造温泉。変わったのは街並みだけではありません。温泉街に勤める皆さんは自主的にゴミを拾い、ここに住んでいる皆さんは足湯などの設備の清掃を行い、地域の女性を中心としたボランティアが休憩茶屋の運営をするなど、“まち”に対する地域の皆さんの意識が変わったのです。
作り上げてきたブランドの意義、街づくりの意識作り、価値観の共有を進めるため、温泉街の仕事に従事する皆さんは月に一度、勉強会を開いています。現在も様々な活動を継続して、温泉街の賑わいをこれからも作り続けていきます。
公式パンフレットは、東京在住の女性イラストレーターが温泉街を散策し、感じたものを来る人の目線で書き綴っています。玉造温泉街は、まだまだ地域ブランドの高みをめざし続けます。
公式サイトはこちら
たまなび:https://tamayado.com/