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もうけの落とし穴

特許出願を審査請求する時の落とし穴

ロボット開発に関する部品のアイデアを思いついた社長!特許出願と同時に審査請求をすることに!
特許も取得し、ロボットが開発できたものの、ロボットの価格が!? 何がいけなかったの!?<平成26年度制作>

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どんな落とし穴だった?

A社の社長は、自社製品に関して、ある技術的なアイデアを思いついた。具体的な製品への適用には数年の開発期間が必要と考えられたが、特許は早い者勝ちと聞いていたので、直ちに特許出願するとともに、権利化も早いに越したことはないと考えて、出願と同時に審査請求した。その後、順調に審査が進み、無事に特許が認められた。一方、特許技術を具体的な製品に適用するため開発を進めたところ、特許技術に起因した新たな技術的問題が生じてしまった。その解決のためには高コストの部品を使用しなければならず、特許技術を適用した製品は、コスト面から市場に受け入れられる可能性が低くなってしまった。

この落とし穴に落ちないために

特許は出願しただけでは審査してもらえず、出願とは別に審査請求手続をしなければなりません。この手続は、出願から3年以内であれば何時でもすることができますので、出願と同時にすることも、3年の期限ぎりぎりにすることもできます。いつ審査請求するかという点は悩ましいところですが、事案のように製品への具体的な適用が未定な場合や、市場が見通せない場合に、早期権利化のみを考えて慌てて審査請求すると、製品化がうまくいかない場合や市場自体の成長が見込めない場合に、審査請求費用が無駄になってしまいます。また、後から見るともう少し広い権利が取得できたのにという場合や、開発した製品をうまくカバーできていない場合も考えられます。状況によっては、審査請求を行わないこと(みなし取下げ)や、公開前に出願自体を取り下げてノウハウに切り換えるという選択が好ましいケースもあります。

一方で、製品のライフサイクルが短い場合や、早い時期に競合他社から模倣品が出回る可能性が高い場合などには、早期権利化により模倣を防ぐことが必要になります。その他にも、早期審査制度を利用するなどして日本国内での権利化を早く進めて、外国での権利取得手続きにうまく繋げていくような場合もあります。
このように、審査請求のタイミングは、必ずしも早ければよいというわけではありませんし、かといって3年ぎりぎりまで待てばよいというわけでもありません。特許技術を適用した製品開発の進み具合、市場の見通し、競合他社の状況など、事業を進める上での様々な要素を勘案して判断する必要があります。

信末 孝之

弁理士

三原・信末特許事務所

特許・実用新案・意匠・商標の権利化や侵害問題に精通。企業の知的財産戦略策定の支援も行う。技術分野は、生活用品、一般機械、運輸、土木建築、制御、メカトロ、コンピューター(ハード)、ソフト、情報処理、通信、電気・電子回路、ビジネスモデルなど。