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もうけの落とし穴

模倣品への特許侵害警告の落とし穴

自社の特許を侵害されたと気付いたある会社。この模倣品を買わないようにと自社の顧客に文書を配布。しかしよく調べると、模倣品は特許侵害ではなかったため、逆に文書配布に対する損害賠償の訴訟提起を受けた!<平成20年度制作>

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どんな落とし穴だった?

ある特許権を有する会社が、「ライバル企業が模倣品を販売しはじめた」との情報を得ます。

直ちに自社の顧客へ『自社特許を侵害するライバル企業の模倣品を購入しないように!』との文書を配布しますが、実際には特許権を侵害するものではなかった・・・・。しかも逆に文書配布に対する損害賠償の訴訟提起を受けてしまって・・・。
さあ、どうなる???

この落とし穴に落ちないために

特許権を侵害されたと考えられる場合に、まず相手方の侵害物件を入手し、特許権を本当に侵害しているのか確認のうえ、侵害していると判断した場合には、警告書を送付するという手順をとることが通例だと思われます。

相手方に警告書の送付をしても、無視され販売を継続された場合、直接顧客に相手方の特許権侵害の事実を告げ、購入を差し控えてもらうようにしたいという誘惑が生じます。実際に、クライアントからそのような要望をいただいたこともありましたが、やめていただくようアドバイスさせていただいております。それはもしも特許侵害では無かった場合、損害賠償の訴訟提起のようなリスクがあるからです。特許権の技術的範囲に属するか否かの判断は微妙なケースもあります。また、使用権が成立する場合などもあり、実際には相手方が特許権を侵害しているとはいえないということとなったときは、顧客に対して虚偽の内容を告知して相手方の信用を害したということとなってしまいます。裁判例にも、告知や文書配布の差し止めに加え、約6000万円の損害賠償の支払いを命じた事案(東京地方裁判所平成16年3月15日判決)などがありますので、くれぐれも注意が必要です。

山本 英雄

弁護士

加藤・山本法律事務所

昭和62年弁護士登録、加藤・山本法律事務所に所属。
企業の監査役のほか、特許に関する講演やセミナーなど、知的財産に関し法的観点からの支援を行う。