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もうけの羅針盤

企業経営における金融と知的財産について

オリジナル製品を開発し、下請けから脱却!特許取得で知財経営を進めるコーポレーションパールスター。しかし、前年の売り上げ6分の1という大幅な減少。しかし、金融機関の評価は・・・。 企業経営における金融と知財について<平成26年度制作>

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この知財の開発元

株式会社コーポレーションパールスター

広島県東広島市安芸津町三津4424

http://www.corporation-pearlstar.com/

電話番号0846-45-0116

代表者専務取締役 新宅光男

開発ストーリー

下請けからの脱却

OEM製品など大手の下請けとして靴下を製造してきたが、大手からの大幅な受注カットにより売上げは低迷。赤字へと転落する。自分たちが心を込めて作る製品が、大手からの一言によって無に等しくなってしまいます。我が製品でありながら、製品の値段すら自分たちで決められない。厳しい経営状況の中、新宅専務が選んだ道は、オリジナル製品の開発だった。
1915年から培ってきた技術力とノウハウを活かし、これまでには無かった製品、履くだけでつま先が上がる「転倒予防靴下」の開発に成功したのです。

金融機関による共同研究のコーディネート

厳しい経営状況の中、金融機関に相談を持ちかけた新宅専務。そこで、金融機関(広島銀行)にコーディネートしてもらったのが広島大学との共同研究だった。長年培ってきた技術力は、金融機関も高く評価していた。この研究開発によりこぎつけた製品が「転倒予防靴下」。
研究開発の面に金融機関に深く関わってもらい、中長期的な事業計画にも携わってもらったことは、企業経営力の向上になったと新宅専務は話す。

売上低迷!しかしスムーズな融資が!

「転倒予防靴下」の開発を機に、さまざまな機能性靴下を開発。順調に売上を伸ばしてきたが、2014年。前年売上から6分の1も下がってしまう事態に。
その状況の中、新宅専務に話を聞くと「全く問題無い。」と焦る様子は無かった。
というのも、金融機関(広島銀行)からの融資をスムーズに受けることができたからだ。むしろ金融機関から早めの早めの融資を持ちかけてもらった。
売上げは低迷したものの、売上低迷の原因の追究、短期的な売り上げの見通し、また中長期的な事業計画など新宅専務はしっかりとたてていた。また、知的財産という経営にとって大きな財産もある。
新宅専務は、次のように語った。「知的財産は、絶対的な安全保障だ。今のコーポレーションパールスターが知財経営してきたことで、大手企業と連携して共同開発にも結び付いた。こうした実績は、金融機関が企業に融資を行う、評価の大きなポイントになるはずだ。」

成功ポイント

中小企業にとって知的財産戦略、知的資産経営が重要であることがクローズアップされているが、どのようなことなのか。
「知的資産」とは、「企業等の競争力の源泉としての、人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、顧客とのネットワークなど、財務諸表には現れてこない資産の総称」とされている。
知的資産の構成要素から考えてみると人材は知的資産を創出する源泉で、そこから湧き上がるアイデアを具現化して適正に還元することで企業は成長していく。技術は自ら開発したのに誰もが使えるならば、次の開発にはつながらない。技能は人財育成と技術開発への期待があるからこそどの業務にわたっても磨かれる。
知的財産(特許・ブランド等)はこのような無形なものを権利としておさえるためのツール。
組織力は知的資産そのものを会社にいるすべての人が効果的に活用し、収益を上げるための体制。顧客とのネットワークは、単なる売り買いだけでなく、最適な関係であるために自社ブランド(商標権)を守り、知的財産権によって模倣品の氾濫を抑えて品質が守られてこそ構築される。
ざっと考えても知的資産と権利化を鑑みた知的財産戦略はすべてつながっているといえる。知的資産は企業の根幹にあるものだといえる。

ビジネスはタイミングであったり、事情の変化でどうしても業績の変動は避けられない。
だから、一定のマーケティングと市場動向、技術動向をある程度見極め、さらに現在の開発をいかに効果的に行うかが重要となる。「会社の強み(知的資産)をしっかりと把握し、それを活用することで業績の向上に結びつけること」を「知的資産経営」といっているが、知的資産に関わる支援では技術開発だけでなく、事業を見据えて企業の知恵の創造と保護を絶えず図り、その活用とビジネス展開を考えることであり、そこには様々なビジネスに精通する金融機関による支援が特に重要かつ必要であるといえる。
このような状況から特許庁は、知財担保融資で金融機関と調整を進める中小企業へ、知財に詳しい中小企業診断士等を派遣する制度を設けている。この専門家支援を受けて知的資産評価報告書を作成し、金融機関は報告書をもとに融資の判断をする政策を進めている。広島銀行においても知的資産評価報告書の作成を支援している。

最近の金融機関は大学や企業のマッチングを行い、新たな風を吹き入れることで、企業の活性化と新たな可能性、情報の広がり、次への発展へとつなげようとしている。1社だけでは開発はなかなか進まない中で、大学等の研究成果や企業の共同研究を推し進めることは、技術の裏付けや自社内ではなかなか賄えない技術開発を効率よく効果的に進めることができるといえる。

コーポレーションパールスターの事例は、知的資産経営を念頭においた金融機関と地域企業がまさにビジネスを成功させるために取り組んだ事例といえる。本事例は決して特異なものではない。企業経営者の情熱とそれにこたえる熱心な金融機関があれば成功事例はもっともっと多く輩出できるものと信じてやまない。

桑原良弘 知財活用プロデューサー

桑原良弘

知財活用プロデューサー

ディスプロ

大手メーカーで生産設備や独自商品の開発設計・商品化に従事した後、コンサルティング会社にて、新事業・新商品の開発・知的財産の権利化に16年携わる。同時期に中国経済産業局特許流通アドバイザーとしても活躍。2007年より独立、製造業の顧問や地域機関と連動した企業の開発支援などに奔走中。