文字サイズの変更
もうけの羅針盤

事業が順調な企業における経営課題(事業承継)と経営デザインシート

人手不足に悩む現場を救うかもしれないFKメッシュパネル工法。
開発されたFKメッシュパネル工法を使用すると作業時間が短縮でき、作業量がアップすると人手不足に悩む全国の現場で話題に。
全国各地で使われるようになったその理由とは?〈令和4年度作成〉

動画をブログで紹介する

上記コードをはりつけてください

お使いのサービスによっては、正常に表示されない場合もあります

この知財の開発元

株式会社 藤崎商会

広島県広島市中区江波南2丁目

http://www.fujisaki-shokai.co.jp/

電話番号082-292-6321

代表代表取締役社長 藤﨑 和彦

開発ストーリー

人手不足に悩む現場を救う新技術

一般的にコンクリート舗装は道路の強度を上げるために鉄筋を入れるが、「FKメッシュパネル」を使用すると、強度がアップするのはもちろん、一人当たりの作業量を減らすことができ、人手不足に悩む現場で話題の新技術。
網目状に溶接した鉄筋を現場で並べるため、誰でも施工することが可能に。
さらに作業時間が短縮でき、作業量が6~9倍にアップする。
実際に使用した現場からのクチコミで広がり、今では日本各地の現場で使ってもらえるまでになった。

藤崎商会が取り組む経営デザインシート

新技術を展開していく中で取り組んだ経営デザインシート。
最初に経営デザインシートを作成して数年経過したのち改めて更新したそう。
その理由はつくって終わりではなく、事業継承にも役立てたいと思ったから。
FKメッシュパネル工法のつくった当時の思いや製造方法の情報などを追加修正していくことで会社内でも情報を共有することができる。
さらに社外にもFKメッシュパネルについて説明する際にも、経営デザインシートを見てもらうことで内容を知ってもらうことができる。

成功ポイント

高速道路のコンクリート舗装工事の工期を画期的に短縮したFKメッシュパネル工法。
この技術を開発し全国に普及させた藤崎商会の成功ポイントは「経営をデザインする」という考え方の実践でした。

「経営をデザインする」とは、今の事業を前提にしてそれをいかに改善するかという発想をするのではなく、5年後、10年後のありたい姿、社会に価値を提供している姿をえがき、そこに向かって進んでいくというバックキャストの発想です。

ポイント1:藤崎商会の「ありたい姿」
「ラストスタンディングカンパニーになる」つまり、最後までたち続ける会社でありたいという想い。そして、それを「ローテクを極める」という藤崎商会らしさで実現するという意志。お客様そしてお客様を通じて社会に貢献し続けようという理念がすべての成功の起点になっているでしょう。

ポイント2:事業環境の変化
少子高齢化の影響により、多くの業種で若手の労働者が不足している現状があります。また、建設労働については肉体面や危険を伴う面から人材不足が深刻化しやすいと言えます。藤崎商会を取り巻く事業環境において、このような将来にわたり構造的な社会課題が生じるポイントを察知したわけです。

ポイント3:藤崎商会が目指した姿
そのような建設業界の事業環境変化が進む中、藤崎商会が目指した姿は企業理念を事業環境の変化に対応して実践するものでした。
3年の開発期間と多額の資金をつぎ込んでまで実現したかった藤崎商会の未来の姿です。

①提供価値
人手不足が進んでいく施工現場において、「省人化」のニーズがますます増加することが予測される中、「高い品質」「工期短縮」などの価値も同時に実現できるFKメッシュパネル工法が生み出す価値は、将来にわたってインパクトがあります。働き手の人材不足という社会課題を解決する社会的価値と同時に、工期短縮による大きな経済的価値を生み出しました。

②ビジネスモデル
工場で溶接によって鉄筋をメッシュパネルに加工して、それを現場で並べていくという新しい方法により、鉄筋の加工コストは生じるものの、省人化により工事全体のトータルコストを抑えることで利益を生み出す優れたビジネスモデルです。

③経営資源としての知的財産
このビジネスモデルに必要となる経営資源として次のものが挙げられます。
「コンクリート舗装で鉄筋を入れる際にもっと時間を短縮できる方法はないか」という現場の声、つまり現場の困りごとを察知できる人間関係
道路工事を知り尽くした解決アイデアと技術力(特許)
新しい工法を採用してもらうために必要な試験データの取り方や国土交通省のNETISの取り方の知見
資金調達のための信頼

そして、藤崎社長は経営デザインシートを会社の振り返りに活用しました。
本来は、経営デザインシートは会社の未来の姿を構想するための思考補助ツールです。これを振り返りに使えたのは、そもそも藤崎工業が「経営をデザインする」考え方を実践できていたからです。
また、一度書いたら終わりでなく、改めて更新をしたところもポイントです。事業の変遷を振り返ることができるだけでなく、事業継承や社員、銀行、携わる材料メーカーなどとのコミュニケーションツールとして活用されています。

経営デザインシートをツールとして使いこなし、「経営をデザインする」という考え方を実践し続ける藤崎工業のこれからの発展が楽しみです!

近藤 泰祐

一般財団法人知的財産研究教育財団
知的財産教育協会
事業部長

1994年 岡山大学法学部卒業
2020年 金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科修了(MBA)

1996年大手通信教育企業に入社。主にアセスメントサービスの企画・編集、学力調査等に携わる。2003年より、知的財産教育協会の設立、民間検定である知的財産検定の創設に参画。副事務局長、事務局長と歴任し、2008年の国家検定(知的財産管理技能検定)への移行に携わる。

国家検定への移行後は、現職として、検定試験の普及・運営、知的財産管理技能士会の運営、知的財産アナリスト認定講座等の人材育成事業を担当。経営デザインシートの公表後、内閣府と連携しながらその普及活動に取り組み、公的機関の中小企業支援(主に新価値創造の領域)に携わる。