「経営デザインシート」は、過大な債務と返済負担にあえぎながら、将来の希望が持てずにいた特殊鍍金化工所さまにとって大きな希望になったと思っています。
さらに、メインバンクから高い評価を受け、信頼度の向上や融資のリファイナンスに道筋をつけられたことも大きな成果でした。
その作成ストーリーは動画の通りですが、本編では、その裏にあった3つのポイントを挙げてみたいと思います。
まず一つ目のポイントは、「未来に希望を持とう!」ということです。
今回の事例では、さあ事業計画書を作りましょうという初期段階での柴社長の反応は、「事業計画書なんて作っても意味がないんじゃないですか?」
「出来もしない数字を並べるだけで時間の無駄ではないですか?」というものでした。
私は、「柴社長さんは、今までたくさん事業計画書を作らされて来たんだな?」と感じましたが、同時に「それでも、作らないといけません。」と言うことに意味はないなとも感じました。
そして、私は言っていました。
「柴社長、今のことは忘れて明るい未来を考えましょう!」「今までの事業計画書ではなく、社長の思いや未来への希望を詰め込んだ未来計画書を作りましょう!」と。
「そんなの作って金融機関は認めてくれるの?」「今をもとに、2~3%アップの売り上げ計画にしないとどこも認めてくれない、と今までの人からも言われていますよ…」
そう反論する柴社長に対して、私は、「大丈夫です!」「国の内閣府の作った『経営デザインシート』というものがあります。社長の目指す未来を語っていいんです!これは、国も推奨しています!安心してください。大いに未来計画を語りましょう!」
そして、『社長の思いと未来から構想を練る!』という経営デザインシートを見ていただきました。
その時、柴社長の顔がぱっと明るくなったのを鮮明に覚えています。
「これはしっかりした『経営デザインシート』が出来る!」その時、そう確信しました。
柴社長には、未来を語りたい!と言う秘めた思いがあったのです。
そして、私もこの会社にはそれを支える力があると感じていました。
そして、2つ目のポイントは、「従業員さんも含めてみんなで作る!」でした。
ここを賛同していただけるかは、会社の未来を従業員さんと共有できるか否かの分かれ道になると思っていましたが、これはあっさりOKしていただけました。
柴社長さんは結構オープンでした。そして自ら改善する意欲があると感じました。
大概は、専門家に任せようとか、内輪だけで作ってしまおうとか考えがちですが、これでは本当に会社の課題に真摯に向き合うことは出来ません。みんなで議論し、自らの痛いところも認めて改善する!という姿勢が極めて大事です。
そして、『みんなを巻き込む!』にメインバンクも参加してくれたら最高です。これも、メインバンクの多摩信用金庫さんが積極的に取り組んで頂けました。そして、このメインバンクの素晴らしいところは口を出さずに見守ってくれたことです。
そして、3か月に渡る海戦が切って落とされました。
3つ目のポイントは、ローカルベンチマークでした。
当初は、経営デザインシートでの「経営理念」 「未来」 「現在」 「移行戦略」に乗っ取って進めて行こうと考えていましたが、やはり未来構想への『引き出し』は必要でした。「少し発想が甘いかな、もう少し詰められないかな…?」という何となく根拠と自身のない未来が経営デザインシートの右側に出現していました。
そこで、「それでは!ローカルベンチマークで徹底的に現状の強みや弱みを洗い出してみよう!」「未来へとジャンプ出来る引き出しを見つけよう」と同シートをみんなに配ってあれこれ洗い出し作業を始めました。
ここは、意外と楽しい作業でした。商流や業務フロー、4つの視点など自分側だけでなく取引先の立場からも考えてみるということは、今まで当然と思っていたことが結構な強みだったり、普通だと思っていたことが弱みだったり、と新しい発見が続きました。
これは共同作業の効果が良く出た場面だと思っています。
そして、この強み(シーズ)を未来に膨らませよう!と自信のある未来が描けるようになりました。
通信分野一辺倒だった取引業界も医療分野や自動車分野が見えて来たり、当社の自慢の技術力「3元合金めっき」も何に提案して行ったらいいかなども見えてきました。
実は、そこで気を付けたのは、現状の延長線にならないことでした。「この強みは未来に何に化けるんだろう?」(つまり、「それは未来の価値になっているか?」)と言う観点を大事にしたことでした。
そういう作り方の出来るところが経営デザインシートの素晴らしいところでもあり、このシートにすんなり帰れた要因だと思います。
そして、経営デザインシートの流れに沿って、移行戦略の議論へと進んでいくことができました。
以上3つのポイントを上げましたが、使う側の立場によってこの着眼点はさまざまに変わると思います。しかし、未来に魅力を感じてもらうこと、そして現在の移行戦略から考えるのではなく、未来からの移行戦略を考える視点を常に忘れないことがもう一つの大事なポイントだと思います。
経営企画室 室長 清水一郎
株式会社マネジメントパートナーズ
大手地域金融機関にて支店長、本部各部署に在籍し審査、融資企画、回収等幅広い業務に従事。
中小企業の課題解決支援を長年実践した経験を活かし、製造業、建設関連企業に出向して経営企画を担当。
現在はマネジメントパートナーズにて、金融機関と会計事務所をつなぐ事業企画、教育研修等の役割を担う。