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もうけの羅針盤

新たな技術開発のシーズは!ここにあった!

画像処理技術で工業製品の製品検査や作業効率向上に貢献するシステムやアプリケーションソフトを開発する企業が、新たな分野・医療分野への進出を果たした。そのきっかけとなったのは、大学の技術移転だった。<平成24年度制作>

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この知財の開発元

株式会社イノテック

広島市中区大手町3-6-30

http://www.inotech.co.jp

電話番号082-544-0011

代表代表取締役社長 伊藤賢治

開発ストーリー

大学の技術を移転し新たな分野への進出に成功

広島市中区にある株式会社イノテック。画像処理技術で工業製品検査や作業効率向上に貢献するシステムやアプリケーションソフト開発を行う企業です。1969年の創業以来、100%工業製品を手掛けてきました。
順調に売り上げを伸ばしていましたが、2008年のリーマンショックで厳しい状況を迎えました。そんな中、一本の電話(東京大学TLO)によってイノテックは新たな道へと進むことになりました。東京大学TLOから紹介を受けた技術は、変形性膝関節症の自動診断技術でした。レントゲンを読み込んでボタンを押すだけで、骨の隙間を自動的に読み取る技術で、その技術を一目見た伊藤社長は、すぐに東京大学TLOと契約を結び、アプリケーションシステムの開発に取り組みました。東京大学と共同開発の末、変形性膝関節症の支援ソフト「KOACAD」は完成。さらに、ソフトのクラウド化にも成功。現在、全国の病院に広まりつつあります。

東京大学TLOがイノテックに技術移転をもちかけたきっかけは、イノテックが大学の技術を移転し、ソフトウェアの開発に成功したという実績があったからです。
現代工業に欠かせない、製品検査や作業効率向上に貢献するシステムを構築しているイノテック。その製品のひとつ、粒子の数や寸法を計測する「QuickGrain」。照明ムラのあるサンプルでも正確に計測できるという広島工業大学の特許技術を移転し、開発したアプリケーションソフトです。

成功ポイント

PC本体の処理性能はここ数年で飛躍的に向上しています。しかし、PC本体の処理性能が上がったからといって単純に解決できないような問題はたくさんあります。
今回の変形性膝関節症の診断はまさにこのパターンです。 こうした難しい問題を解決するには、解決のための処理手順(アルゴリズム)が必要になりますが、このアルゴリズムは、コンピュータのプログラムを記述することとは別次元の話になり、研究的な要素が必要で、ソフトウェア会社単独ではなかなか行うことができません。

イノテックさんの場合、元々画像処理を行われていたことと、広島工業大学の特許技術を移転した開発実績があったことが直接的な成功要因かと思われますが、 それ以前に、東京大学TLOから電話が入るような実績を作り上げていたことが大きなポイントではないかと思います。 VTR中でも自社のことを「少数精鋭」とおっしゃられているように、とにかく画像処理分野に特化した開発、いわゆる選択と集中を実践し、技術者を育成されてきた点こそが、真の成功要因であると言えます。

また、ソフトウェアに限らず、大学には多くの未活用知財が眠っています。 大学の場合は、実用化から遠いものが多いと思われがちですが、今回のイノテックさんのように、元々自社保有されていた技術と大学の知財を組み合わせることで、 一気に実用化が近づくものが多々あります。大学の知財は、最近では大半がWebで公開されていると同時に、TLO、知財本部など、 活用相談の窓口を設けていますので、これらを積極的に活用することで、どの企業にも活路が見えてくるのではないでしょうか

解説者写真

宥免 達憲

大学・研究機関担当者、IT・知財プロデューサー

株式会社Lafla

NECグループ企業にて、十数年間にわたりシステム開発を経験。その後、数年間はコンサルティング会社にて新事業・新商品の開発、知財活用に携わり、2006年9月に地元広島にて独立。現在は、大学発ITベンチャー企業Laflaの代表も務める。