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もうけの羅針盤

知財で海外進出に成功!注目の環境ビジネス

土木設計などを主な業務としてきた永和国土環境株式会社は1996年より環境浄化事業に着手。そこで開発された排水再利用処理装置「アクアメイク」は海外での展開に成功。待ち受ける困難にどう立ち向かったのか?<平成21年度制作>

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この知財の開発元

永和国土環境株式会社

広島県福山市南蔵王町2丁目21番27号

http://www.ecoeiwa.co.jp/

電話番号084-924-7402

代表岡本良一

開発ストーリー

自己処理型バイオトイレ アクアメイク

広島県福山市に本社を構える『永和国土環境株式会社』。公共施設の土木工事などを手がける企業です。そのオフィスを訪ねると、電話で外国からの問い合わせに対応していました。海外でも成功した画期的な技術、それはバイオの力で下水を処理する最先端の環境トイレです。現在自社の知財を海外で事業化する最大の相手国は中国です。きっかけは中国で造船事業を手がける日本企業との出会いでした。造船所を作った島の衛生環境に一役買ったのです。
その技術がバイオトイレ『アクアメイク』。

分解イメージ

分解の様子

はじめての中国進出。そこには幾多の困難が待ち受けていました。それを乗り切る極意を岡本社長に聞きました。まずは「行政処理の遅さは覚悟せよ!」そして国際特許の問題に言及。「国際特許は技術の保護と信頼獲得であることを認識せよ!」技術保護に必要な国際特許。これには取得・維持に多額の資金が必要なのです。そこで岡本社長がとったのは「特許の評価」。国内にある評価会社がはじき出した評価額で銀行に融資の話を持ち込もうとしたのです。ところが当初は応じてもらえませんでした。何度も交渉を重ねた結果ようやく一部認められることに。

岡本社長

様々な困難を乗り越えて感じたことは「海外での実績」が必要だと岡本社長は言います。大変でもまずは自分たちが身を持って体験することが次につながるといいます。その経験こそが海外展開を成功に導くのです。

成功ポイント

中小企業が事業を展開していく上で、どうしても問題になるのが資金調達をいかに行うかという点です。特に、海外で事業を展開していく場合には、莫大な費用が必要となります。そうした中で、特許を中心とする知的財産権を活用した資金調達が注目されています。特許権は土地などの不動産と同様に財産権ですので、融資の際に担保とすることにより、資金調達に役立つ可能性があります。そのため、特許の価値評価と特許を活用した資金調達について、知財・会計の専門家や銀行などにより様々な検討が進められています。
特許の価値評価は、一般的に対象となる特許技術を活用した事業計画をもとに算出します。従って、いくら斬新な技術であっても、それを活用して事業化する見通しがなければ、特許の金銭的な価値はないということになります。また、誰にとっての価値かという点も重要であり、ある会社にとっては事業を行う上で価値のある特許であっても、その事業を行うつもりのない他の会社にとっては何の価値もないということも考えられます。また、特許権は一般に処分が困難であり、担保にとったからといって、融資金の返済が困難となった場合に、担保処分による回収は必ずしも見込めません。
そうすると、銀行を含めた投資家が資金を出すということは、特許そのものではなく、特許を活用した事業の価値、もっと言えば、企業そのものの価値を評価しているということに他なりません。従って、企業側は、自社の特許を活用した事業により、いかに将来的な収益をあげていくことができるかを、投資家に十分説明できるようにならなければなりません。反対に投資家側もその事業計画を正当に評価する能力が求められます。今後は、企業と投資家の双方が、特許を中心とした知的財産と事業との関わりについて理解を深めていく必要があるものと考えます。

解説者写真

信末 孝之

弁理士

三原・信末特許事務所

特許・実用新案・意匠・商標の権利化や侵害問題に精通。企業の知的財産戦略策定の支援も行う。技術分野は、生活用品、一般機械、運輸、土木建築、制御、メカトロ、コンピューター(ハード)、ソフト、情報処理、通信、電気・電子回路、ビジネスモデルなど。