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もうけの羅針盤

比類なき独自製品「アイデア靴下」を作れ!

主力取引先からの急激な受注減に苦しんだ靴下製造業(株)コーポレーションパールスター。下請けからの脱却を目指し、オンリーワンの製品開発に挑んだ。足関節の専門家・浦辺教授と「転倒予防くつ下」を開発する。<平成20年度制作>

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この知財の開発元

株式会社コーポレーションパールスター

広島県東広島市安芸津町三津4424

http://www.corporation-pearlstar.com/

082-544-0011

代表者専務取締役 新宅光男

開発ストーリー

新宅光男専務

家業の靴下製造業を継ぐ

新宅光男専務は家業を継ぐことを嫌い、神戸大学大学院で会計学を学んでいた。そんな1977年、父親から二重に編みこまれた靴下がたった一足だけ手紙も説明文も添えられず送られてきた。体に衝撃が走った。使命感を感じた。そして、家業を継ぐ決意を固める。
しかしながら、家業を継いだ当時、経営状況は最悪。従業員への給料の遅配が続いた。新宅専務はこの当時が一番つらい時期だったと語る。靴下製造業のことを何も知らない当時の新宅青年は、自分たちが作った製品の値段を自分たちで決められないことに不満を覚えつつ、猛烈に業界のことを学んでいく。そして、営業努力により堅実に売上を伸ばしていた2004年、主力取引先からの大幅な受注減を余儀なくされる。売上減はそれまでの約4割にもなってしまった。

高齢者が寝たきりになる原因の図

下請けからの脱却を決意。オンリーワンの製品開発へ

足が冷えやすい糖尿病患者との出会いから保温性の高い「二重式あぜ編みくつ下」を開発。開発資金の一部は行政の補助金で工面した。開発することも補助金の申請も初めて。暗中模索の日々が続いた。それでも「機能が付加された靴下」開発の手はゆるめなかった。視覚障害者用の「色が簡単にわかる靴下」も開発。困っている人への機能に特化していこうと考えていた。
そんなある日、高齢者の転倒事故が大きな障害につながることを知る。

大学院保健学研究科の浦辺幸夫教授

医療現場から絶賛 転倒予防くつ下

高齢者は、わずか数mmの段差でつまづくことで転倒する。つまづかないようにつま先をあげる機能を持った靴下の開発が始まった。足関節のデータが必要になった新宅専務は、広島大学の門をたたく。大学院保健学研究科の浦辺幸夫教授との出会いだった。 そして、「足」と「靴下作り」の専門知識と知恵がつまった「転倒予防くつ下」が完成した。現在、リハビリ部門などの医療現場で高い評価を受け、受注が増えた。売上はピーク時に戻りつつある。

成功ポイント

持ちうる知恵を出し尽くす、持たない技術は自らがとりに行く。

キーワードは“執念”と“信念”

本テーマでのポイントは、自社製品開発にかける“信念”と苦しい中でも開発を続けていく“執念”であることがわかります。持ちうる技術の応用を常に考えている執念があるからこそ、市場のヒントやニーズにすぐさま対応して技術を組合せて商品開発ができる。足りない技術は大学などの研究機関に出向き、先生との連携を図って科学的な立証の元に製品を完成させていく、まさに「知恵と知恵の混ざり合い」が新しい製品として世の中に役立っていくのです。こうして文章にすると簡単にまとめられてしまうのですが、実際には中小企業が開発製品を完成させるには並大抵の努力ではすまなかったでしょう。
自社商品ならば販売を担う企業とも対等な立場になる、ということはオンリーワン商品を創り出していることであり、これを実現しているところがすごい。信念と執念の製品開発の賜物です。特許出願もいくつかありますが、社内にある知的財産の活用を絶えず考えていくことが重要であることを認識できるテーマといえるでしょう。

桑原良弘 知財活用プロデューサー

桑原良弘

知財活用プロデューサー

ディスプロ

大手メーカーで生産設備や独自商品の開発設計・商品化に従事した後、コンサルティング会社にて、新事業・新商品の開発・知的財産の権利化に16年携わる。同時期に中国経済産業局特許流通アドバイザーとしても活躍。2007年より独立、製造業の顧問や地域機関と連動した企業の開発支援などに奔走中。