シリーズ│~局長の部屋~

知らないと怖い知財の話

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中国経済産業局長 渕上 善弘

中国経済産業局では、知的財産を学ぶための動画サイト「もうけの花道」※1を制作し、企業経営に役立つ情報を発信しています。しかし知的財産は「もうけのために重要」なだけではないのです。ハッと気がついて振り返り、じんわり冷や汗をかく・・・これは、真夏の夜の怪談ではありません。今回は、知らないと後で怖~い思いをする知財にまつわるお話しを二つ。


まずは、広島県内で産業用機械を製造している、ある企業(A社)の共同開発に関するお話。
A社は、大企業であるB社との共同開発のために契約を結び、大事な自社技術を注ぎ込んだ新製品の作成を目指し、協力関係を築いてきました。契約期間中は円満な関係の二社でしたが、契約期間終了後に、B社は新製品に関する特許を単独で取得してしまいました。気がついたときには後の祭り・・・。契約内容に深く暗い落とし穴があったのです。

その深く暗い落とし穴とは、A社はB社との契約において、共同開発の成果の帰属・取扱いについて何も定めていなかったことでした。これについて契約に定めておかないと、権利関係が不明確になり、紛争が生じる原因となります。A社は契約期間終了後のことには注意を払っていなかったため、契約後にB社に権利を取得され、新製品の製造を独占されてしまったのです..。


二つ目は、不用意に他社へ情報を渡してしまったC社のお話。

某市で機械部品を作っていたC社は、ある企業(D社)から自社の技術に関する引き合いが来た際に、技術の理解のために図面やサンプルを求められたため、あまり深く考えずにメールに添付して送信しました。そうしたところ、D社によってその製品を出願・登録されてしまったのです。さらにD社は製品の販売も始めてしまいました。不用意な情報開示により、自社で当該技術を使うことができなくなってしまったのです。

C社は、日頃から社外に出してよい情報・出すべきでない情報を選別しておくべきであり、出すべきでない情報は秘密として管理しておく必要がありました。そして、社外に出しても問題ない場合であっても、図面やサンプルを渡す前には、相手に渡した情報の内容やサンプルの返還時期等を記載した秘密保持契約を結んでおくべきでした。ここにも落とし穴があったということです..。

知らないと怖いですね

このように、共同開発や取引に関する情報を開示する時には、秘密保持義務が既定される場合があります。秘密保持契約は、知的財産を保護する点において非常に重要な役割を担います。特にスタートアップ企業※2にとっては、先端の技術、ビジネスモデルこそが競争の源泉そのものであり、特許となりうる自社の情報を保護することは重要な課題となっています。

しかしながら、今年発表された公正取引委員会の「スタートアップの取引慣行に関する実態調査について」※3(中間報告)によると、スタートアップ企業と大企業間での取引・契約上、問題となりうる事例が多数報告されています。以下に一部ご紹介します。

・秘密保持期間が短い、スタートアップ側だけが秘密情報を開示するなど、大企業だけに一方的に有利な条項があった。

・主に自社のノウハウを用いて新たに生み出された発明等であっても、大企業に権利が帰属する条件になっている。

・自社の技術が詰まった製品の製作を大企業に依頼したところ、その技術に関連する特許を無断で特許出願された。

・契約時に製造や販売に関して、不利益を被るような独占契約を結ぶように、何度もしつこく迫られた。

・取引先の契約のひな型を全て受け入れなければ契約不可とされ、契約の修正に応じてもらえなかった。


優越的な地位にある取引先に、無理矢理ノウハウを開示させられたり、苦労して開発した技術が横取りされるようなことが起きては、企業の知的財産戦略自体が成り立たなくなる恐れがあります。

経済産業省、及び特許庁では、公平かつ自由に競争できる環境の確保に向け、「モデル契約書」 ※4を作成し、公表しています。この「モデル契約書」は、契約交渉で論点となるポイントを明確 にしつつ、上記実態調査の中間報告で明らかになった問題事例に対する具体的な対応策を示したものです。


昨今は新型コロナウィルス感染拡大を防止するため、新しい生活様式のもと、様々な事業者において、非接触型ビジネスの推進や新たなアイデアの商品・サービスを生み出す動きが加速しています。このような新たな取組を知的財産の観点から守っていくことが大事です。

冒頭お話ししました「もうけの花道」では、企業経営に役立つ情報を発信しています。知的財産の基礎や、見落としがちな盲点をアニメで楽しく学べる「もうけの落とし穴」をはじめ、知的財産を活用する方法や事業リスクを回避するための注意点などを、わかりやすく紹介していま す。上述の「共同開発」をテーマとした動画もありますので、自社を守る観点から、是非一度ご覧ください。

※1 もうけの花道

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2020年8月27日掲載

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