シリーズ│地球を笑顔に!(第52回)

セルロースナノファイバーを活用した消臭剤

木質バイオマス素材の商品化例


(一社)中国地域ニュービジネス協議会
チーフコーディネーター
竹内善幸

岡山県では、県内に豊富に存在する木質資源を活用し、環境に配慮した新たなバイオマス産業の創出を目指して「岡山グリーンバイオプロジェクト」をスタートし、産学官連携によるバイオマス利活用技術の開発に取り組んでいます。その一環として、セルロースナノファイバー(CNF)等の高付加価値新素材の生産技術及びCNFを含む木質バイオマスを利活用した新技術・新製品の研究開発並びに開発成果の事業化支援を行っています。
(旬レポ 中国地域 2016年3月号及び2017年3月号参照)

このような状況の中、真庭バイオマスラボ(岡山県真庭市)は、バイオマスリファイナリー事業の共同研究、バイオマス関連の人材育成、バイオマス産業の拠点として、岡山県と真庭市の共同により平成22年4月16日に開所されました。本ラボでは、地元関係企業、研究機関、大学、NPO、国、岡山県と真庭市が産学官連携により、真庭市からのバイオマス産業創出を目指しています。

平成27年3月に真庭バイオマスケミカル(株)(以下、「真庭BC」という。)が設立され、この真庭バイオマスラボに入居しています。真庭BCでは、CNFを原料として、消臭剤の商品化(表1.参照)を行っています。今回は、このCNFを活用した消臭剤についてご紹介致します。

表1.CNFを活用した消臭剤
CNFとは

CNF(セルロースナノファイバー)』は植物(木)の中に元々あるセルロース(植物細胞壁の主要構成成分)をナノサイズまで細かくしたもので、日本が資源大国となる可能性を秘めた新素材として期待されています(図1.参照)。

注1:1ナノ=1ミリの100万分の幅(一本が髪の毛の5000分の1から10000分の1ほどの太さ)

真庭BCでは、モリマシナリー(株)製のCNFを原料として使用しています。

※LCNF:リグニンセルロースナノファイバーの略
図1.ナノレベルまで微粉砕された木材繊維(CNF)
CNFの特徴

CNFには、以下の特徴があります。

  1. (木が原料だから)安全・安心(図2.参照)
  2. 繊維の直径(幅)は数十ナノメーター(微細のため) → 表面積が大きい
  3. (木の細かい繊維が複雑に絡み合うので)強度が高い
  4. 水中に分散
図2.CNFの製造
CNF消臭剤の特徴

CNF消臭剤には、以下の特徴があります。

  1. 木材・パルプが原料
    木質バイオマス由来の新素材「CNF(セルロースナノファイバー)」を使用。
  2. CNFの特徴を活かす
    大きい表面積を有し、反応部位が多数のため少量でも消臭効果が高く、長期的に使用可能。
    また、コストパフォーマンスに優れている。
  3. 消臭機構が明確
    化学的消臭法により、狙った悪臭に効く。
  4. 用途の応用が可能
    様々な用途に使用可能(例:ゴム、ビニール、水中など)。
  5. 安全・安心
    有機溶剤は使用せず水中に分散。
    また、消臭剤はCNF誘導体のため安全。

また、CNF消臭剤は、P-CNFとX―CATの2種類があります。

P-CNFは、フタロシアニンを有し、酸化分解の特徴を持っています。

X-CATは、特殊な官能基が付加され、反応吸着の特徴を有し、さらに、官能基の違いにより、A-CAT,i-CAT,An-CATの3種類に分類できます。

CNF消臭剤の消臭力

CNFには、以下の特徴があります。

  1. 『P-CNF消臭剤』の消臭性能

    ゴミやトイレなどから発生する硫化水素やメルカプタン類などの硫黄化合物に対して大きな効果があります(図3.参照)。


    図3.P-CNF消臭剤の消臭性能
    試験方法:繊維評価技術評議会法に準ずる
    評価機関:関西ラボラトリー(株)
  2. 『X-CAT消臭剤』(A-CAT,i-CAT,An-CAT)の消臭性能

    たばこや体臭から発生するアルデヒド化合物やアンモニア、足から発生するイソ吉草酸等有機酸に対して以下の通り効果が認められます(図4.参照)。

    A-CAT:アルデヒド化合物に著効
    An-CAT:アンモニアに著効
    i-CAT:イソ吉草酸等有機酸に効果

    【当社簡易法評価】
    試験方法;2.8L密閉瓶に各ガスを発生させ120分後のガス濃度をそれぞれのガス対応の検知管で測定。消臭剤あり、なしの差を評価。
    図4.X-CAT消臭剤の消臭性能
P-CNF消臭剤のメカニズム

P-CNF消臭剤は、イオウ系悪臭物質の消臭に大きな効果がありますが、そのメカニズムは、鉄フタロシアニンの酸化・還元作用を利用しています。

また、CNFの一本一本へ多数の反応サイトを付与しているため効果が大きいことや、CNFの表面積の大きさを活かしていることから、少量でも消臭効果が現れます(図5.参照)。

※鉄フタロシアニンとは、代表的な有機顔料の一つで、新幹線や道路標識、また有機ELやレーザープリンターなどに利用されており、さらに酸化触媒としての機能も有しています。
【消臭対象の悪臭物質】 硫化水素、メルカプタン類、アミン類、アンモニア
図5.P-CNF消臭剤のメカニズム
X-CAT消臭剤のメカニズム

X-CAT消臭剤は、各悪臭物質に対して選択性があり、アンモニア、アルデヒド類、有機酸それぞれに特異的に消臭効果を発揮します。(図6.参照)

図6.X-CNF消臭剤のメカニズム
化学的消臭法とは
  1. 悪臭成分を化学反応によってニオイのない成分に変えてしまう方法
    対象製品:P-CNF
  2. 悪臭物質に反応し、反応吸着させ悪臭成分を取り込んでしまい、悪臭を発生させない方法
    対象製品:A-CAT,i-CAT,An-CAT》

化学反応には、酸性とアルカリ性の中和反応や、ニオイ成分の反応性を利用したものなどがあります。身近なものでは、お茶のポリフェノールや、重曹、クエン酸などが「化学的消臭」の効果を持っています(図7.参照)。

図7.化学的消臭法の特徴
CNF消臭剤の使用イメージ

(図8.、図9.参照)

図8.CNF消臭剤の使用イメージ(その1)
図9.CNF消臭剤の使用イメージ(その2)
CNFの安全性

セルロースナノファイバー(CNF)を用いた商品は、「大人用紙オムツ」や化粧品等で肌接触の安全性が確認されています。

CNF消臭剤の対象となる悪臭の種類

セルロースナノファイバー(CNF)消臭剤は、多くの分野での使用が期待されています。新しい応用がございましたら、ご教示ください。

悪臭および対応CNF消臭剤一覧

著者プロフィール

昭和48年 三菱重工(株)入社 広島研究所所属
平成15年 菱明技研(株) 移籍
同年4月より(社)中国地域ニュービジネス協議会
(現在は(一社)中国地域ニュービジネス協議会)
チーフコーディネーターとして活動中
平成27年4月より岡山県産業労働部産業振興課所属
グリーンバイオプロジェクト・コーディネータとして活動中
スマート・ケミカルリファイナリー協議会主催

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2018年2月9日掲載

Copyright 2018 Chugoku Bureau of Economy,Trade and Industry.

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