広島工業大学名誉教授
中山勝矢
散歩をする道にイヌネコ病院があります。入口の横に貼ってある紙を読んでいなかったために、後でペットの歯周病や歯垢の点検のことだと知って、驚きました。(写真1)
歯医者の待合室に置いてある説明資料で、人の歯石や歯垢についていささかの予備知識はありました。しかしペットにも同様の問題があるとは考えたことがなかったのです。
丁寧に読むと、ペットの口臭が激しくなり、歯が欠け、最悪の時には顎の骨が折れて餌が取れなくなるから、定期的に獣医の検査を受けましょうという内容でした。
ある会食のパーティで同席した方と名刺交換をしました。見ると「株式会社ベテリナリーサイエンス社長 和田伸行」とあって、大学の研究成果を事業化しているのだと言われます。
ベテリナリーサイエンスとは「獣医学」のことですが、残念ながら当方には企業の具体的な姿が浮んできません。それで資料の郵送をお願いしました。
届いた資料を開いてみると、最近は口が全身の健康に及ぼす影響が明らかになり、歯磨きをしないペットでは歯周病原菌が与える全身的な影響が分かってきたと書いてあります。
広島大学大学院医系科学研究科(歯)二川浩樹教授は、歯周病や虫歯になったことがない子どもの口内から歯周病菌や虫歯の発生を阻止する乳酸菌を5種類も見つけられたとあります。(写真2)
それらは乳酸菌の一種で、正式名称は「ラクトバチルスラムノーザスKO3株」なのですが、馴染みやすくしたくて、L8020という名を付けてあるのには感心させられました。
口腔内にはこうした役割を担う細菌がいて、歯周病や虫歯の進行を抑制しているだけでなく、胃や腸を経て体内に広がり常に病気になることを防いでいるのです。 (写真3)
その気持ちは、満80歳で自分の歯を20本以上保ちたいとの願いから来ているのです。これは人間の願いですが、ペットにも同様の願いがあっても何ら差し支えないはずです。
送られてきた資料には、説明書と一緒にこのL8020も入っていました。商品名は「わんサプリ」「にゃんサプリ」とあり、ラベルの上の方には「L8020」と記されていました。
サプリは、付属のスプーンでドッグフードに振りかけても、水に混ぜて与えてもいいのです。小型犬なら、一袋がおおよそ一カ月分に当るとあります。(写真4)
さらに粉末状のサプリとは別に、液状のものが入っていました。歯周病菌などの口内の雑菌を死滅させる役割の乳酸菌を調合し、口腔環境を向上させる役割を担わせたものです。
この液が入った瓶にはEtak(イータック)と書かれています。それは歯の抗菌作用を長持ちさせる研究で見出された特別な成分が入っていることを示しています。(写真5)
ペットの死亡原因の上位は歯周病なのです。口腔環境の向上で毛の艶がよくなり目やにがなくなったという報告が届いているそうで、これは嬉しいことです。
この液Etakを乾いた布や紙に3~5滴浸み込ませ、ペットに嘗めさせることで口腔環境が改善され、さらに体を拭いてやれば体に付着したウイルスや雑菌の除去にも役立ちます。
咀嚼した後に飲み下しても口の中に乳酸菌が残り、これが腸内の病原菌の増殖阻止を担うわけです。その適量を見出すため、現場に近い研究室との共同研究が大切だとあります。
最近は、口内菌が腸に至ることを阻止し、牛の腸内環境を整える「もうサプリ」という乳酸菌混合飼料も作られるようになって酪農家から注目されているとあります。
胃が4つある牛では乳酸菌は腸まで届かないような気がします。しかし誕生直後の子牛ではミルクは直接第4胃に入って腸に届き、体重増加が顕著に見られるといいます。
こうした最先端の研究が実用を踏まえながら社会と密着した形で成果を出し、企業化へ進むことがこれからの望ましい姿のような気がしてなりません。
★企業紹介:株式会社ベテリナリーサイエンス
代表取締役社長 和田伸行
〒737-2516 広島県呉市安浦町中央5-8-23
電話0823-84-0666 FAX 0823-84-6657
ちゅうごく地域ナビ 2023年5月1日掲載
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