エッセイ│てくのえっせい 387

亥年に「うり坊」を考える

顔写真

広島工業大学名誉教授
中山勝矢

明けましておめでとうございます。

古い時代、人々は自然の仕組みが分かりませんでした。ですから山の端に太陽が隠れたら二度と現れないことを心配し、翌朝日の昇る姿は心から手を合わせたのでしょう。

今では翌日の日の出を心配する人はいません。しかし来週の天候や夏や冬の気象となると分りませんから、神頼みをしたくなります。そうした気持ちは今も消えていません。

「平成」が終わる今年、近くの神社に「慶祝」という横断幕が掲げられました。新しい時代の到来に不安を感じる人がいるからかなと、ふと考えてしまいました。(写真1)

(写真1) 自宅近くの神社に昨年から掲げられている横断幕 [筆者撮影]
亥年だから「猪突猛進」?

今年は亥年、十二支では最後の年。でも60年一巡りの十干十二支ならば己亥(つちのとい)で、ほぼ中間に当たります。なお60年前の己亥は、昭和34(1959)年でした。

片付けていたら、12年前に貰った木彫りのいのししが出て来ました。眺めていると、その間いろいろなことがあったなという気持ちになりました。(写真2)

(写真2) 12年前に貰った木彫りのイノシシ [筆者撮影]

10年ひと昔といいますが、12年経ったら世代が変わるほどです。10年単位のことを考える機会を作らなければいけないと木彫りのいのししから教えられました。

さて話変わって、子どものころ母から「ネ、ウシ、トラ、ウにネコはいないのよ」と諭されたものです。でもそれは中国伝来の十二支の場合で、世界には変わり種もあります。

調べるとベトナムの十二支では卯(ウ)はウサギではなくて何とネコ、丑(ウシ)は水牛でした。タイでは亥がブタになっていますから、今年はブタ年というわけです。

ロシアにも十二支があるようですし、モンゴルでは寅は虎でなく豹、アラビヤでは辰がワニ、ブルガリアでは寅がネコなのには驚きました。「何だ、これは」の感じです。

そうなると別の視点で考えてみたくなります。先に十二進法の数の呼び方があって、ただ覚え易くするために、身近の動物を割りつけたに過ぎないのかもしれません。

それなのに多くの人は、その年をその動物と関係づけて考えがちです。例えば正月の挨拶で「今年は亥年、猪突猛進せよ」などという気合を聴かされていませんか。

バブルでうきうきしていた時代ならいざ知らず、アクセルばかり踏んでいたら危ない不透明なご時世になっています。冷静に時代を掘り下げ、左右をよく見て舵をとるべきです。

うり坊はペット

いのししは雑食で、何でも食べます。野生のものでは木の根、昆虫、落ちた木の実などを探しては口にしています。そのため通常は首を下げ、鼻を地面に近づけた姿を見ます。

猪突猛進とか、いのしし武者という言葉が浮かびがちですが、それは敵を攻撃、あるいは逃げるときであって、通常は走り回らず、ひたすら鼻で地面を掘る生活をしています。

彼らには、人間が丹精している畑も何も分かりません。一心に餌を求めているうちに、人間側の都合により害獣と見なされ、嫌われ、罠に捉えられて殺されるのです。

いのししの子どもは「うり坊」と呼ばれています。なぜかというと、写真からも分かるように、誕生早々の子どもは、体に瓜によく似た縞があるからです。(写真3)

(写真3) 誕生早々の子どものいのしし「うり坊」のイメージ図 [筆者作成]

見たところ本当に小さくて可愛いので、まだ乳を欲しがるような乳児期に母親から離し、人が乳や餌を与えて懐かせ、手元で飼ってきました。今様にいえばペットです。

いのしし武者や猪突猛進とはまったくかけ離れたイメージです。多分そうした段階を経て、イノシシの家畜化が進み、食用のブタが生まれたのだと思われます。

いのししは、有史以前はユーラシア大陸からアフリカ北部、アメリカ大陸にもいたのです。沖縄の南西列島にも「りゅうきゅういのしし」がいることが知られています。

また一方で家畜化し、いったんはブタになったものが再び野性化していのししに戻った種類も見つかっていますから、人間との付き合いは想像以上に深く長いのです。

人類より遥かに昔、この世に命を受けた動植物を人間の都合で抹殺利用するのを止め、共存の方向に転換することが国連の場でも議論されています。今年の注目すべき課題です。

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2019年1月7日掲載

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