エッセイ│てくのえっせい 377

広がるロボットの夢

顔写真

広島工業大学名誉教授
中山勝矢

ロボットと聞くと、すぐ頭に浮かぶのは手塚治虫さんの鉄腕アトムです。初めて世に出たのが1951年4月。でも単行本ではなく、光文社が出していた月刊誌「少年」でした。

原子力が動力源とあり、何と100万馬力。でも足の先から赤い炎が噴き出ているのが奇妙に感じられましたが、それはそれとして当時の子たちには大きな夢を与えたのです。

今やロボットは製造現場だけでなく、案内人(写真1)から自由走行の床掃除ロボット(写真2)まであり、さらに介護支援(写真3)や無人自動車の頭脳としても期待されています。

(写真1) 店頭に置かれた愛嬌のある案内ロボット(来客に向かって手も上げ、胸に下げたボードで用件を指示するように声でお願いをしている。)(筆者撮影)
(写真2) 展示会での実演中の床掃除ロボット(部屋の隅々まで移動して床のゴミを吸い込み、次の作業をするために無人で方向を転換中。)(筆者撮影)
(写真3) 公益財団法人テクノエイド協会と厚労省が行う介護ロボット導入好事例表彰事業での一例(平成28年度に表彰された社会福祉法人野の花会の例では、腰への負担が25% 軽減できたとある。)(表彰された授賞案件ガイドブックから引用。)
夢に花が咲く

ところでロボットは、チェコ人の劇作家カレル・チャペック (1890-1938) の戯曲「ロボット」(1920) に始まるとされます。ロボタは、チェコ語で労働を意味する言葉なのです。

多分その戯曲では、チャールズ・チャップリンが1936年に映画「モダン・タイムス」で資本主義社会や機械文明を痛烈に批判したのと同様の主張がなされていたと思われます。

1980年代、対日赤字に苦しむ米国は大衆の前で日本車を叩き壊しました。わが経営者は安売りではなく、コスト削減と品質向上は工場のロボットたちによるのだと語ったのです。

子どもたちに蒔いた種は、ロボット王国日本という花を咲かせました。日本ロボット工業会によると、2017年も好調で、年間生産台数は22万台を超える見通しとのことです。

ただこれは会員企業の分の集計で、サービスロボットとか介護系や癒し系のロボットまでは含まれていないでしょう。広大な未着手の分野が、裏で出番を待っているわけです。

これまで人工衛星の寿命は搭載推進薬の量や部品の寿命で決まっていました。近年寿命延長によるコスト削減が強く要望されるようになってきました。新ビジネスの到来です。

寿命の尽きかけた衛星に推進薬を補給し、部品の交換を行うためには、軌道上の衛星に別の衛星を近づけ、正しい向きでランデブー/ドッキングをさせなければなりません。

その後、ロボットアームを伸ばしてカバーを取り去り、推進薬の補給口を開いて注入し、必要なら部品を交換するのですから、まさに最先端の技術に挑むわけです。(写真4)

(写真4)軌道上で行う人工衛星へのサービス(実用衛星の寿命延長のために、宇宙空間で推進薬の補給や性能の低下した部品の交換をロボティックスを駆使して行うイメージ図 。)(IHI技報に掲載の図から引用)

こうしたロボットは地上とは違い、遥かに難しい。この開発を現在、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と(株)IHIエアロスペースが知恵を絞っています。*1

新しい課題に向かって

JISによる産業用ロボットの定義は「自動制御によるマニピュレーション機能又は移動機能を持ち、各種の作業をプログラムによって実行できる、産業に使用される機械」です。

これだと、身近にある多くのニーズが枠外になり、期待される受付嬢代行ロボットや来客に応対するサービスロボットの類いは、ロボットと呼べないことになります。

介護の世界では、人間に代わって面倒を見てくれる機械が欲しいのです。しかしこれもまた、JISが定義するロボットのイメージから考えていったのでは発想が広がりません。 

2020年のパラリンピックに向い、身体に障害のある選手が紹介されています。普通の社会活動に参加するための補助器具開発は、これからの社会にとって大きな課題なのです。

一人で立てない高齢者をベッドから車いすに移し、また戻すことには大きな力が必要で介護者にとっては重労働です。ここにも、新しいロボット技術が期待されています。

従来とは異なった視点が必要です。対象は複雑であり、一括りにできないものばかりです。実態調査をし、分析をして安全なものを安く作らなければなりません。

戦争が行われて地雷で損傷を受けた人たちに、義手義足の技術を提供している企業が島根県大田市にあります。中村ブレイス(株)といい、多くの賞を与えられています。

こうしたことに日本ロボット学会は熱心です。JISの定義の議論もしていると聞きます。研究は、厚労省傘下の国立障害者リハビリテーションセンター が取り組んでいます。

子どものときにロボットに夢を感じた人は、高齢化が進む世界に対し、介護系のロボット、社会システムへの人工知能の活用などの課題にもっと幅広く挑もうではありませんか。


【参考資料】
(*1)IHI技報「宇宙開発特集号」Vol.57 No.3 p.42
本件問い合わせ先:(株)IHIエアロスペース 宇宙技術部宇宙機システム室
電話:0274-62-7673

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2018年3月4日掲載

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