エッセイ│てくのえっせい 374

新しい時代のサービスを

顔写真

広島工業大学名誉教授
中山勝矢

訳もわからず待たされるのは、嫌なものです。いつからか電車が前の駅を出たとか、あと数分でホームに到着するといった電子表示が出るようになりました。(写真1)

(写真1) 東京の駅ホームで見かけた電車到着予定表示

電車が出たばかりだったらなおのこと、次の電車が来る時間が気になります。同じ待たされるにしても、こうした表示が出ていれば気持ちが和らぎます。

最近はバス停でも、時刻表の他に、バスがいくつ手前のバス停留所まで到着したかをお知らせするものがあります。路線の中には時間帯によって休止という場合もありますから、助かります。(写真2)

(写真2) 東京で見かけたバスストップのバス接近表示板 (新宿駅西口行の都バス白61」は直前のバス停を出発したことがわかる)
よい方法はないものか

ここまでは誰しもが考えるところです。しかし電車と違って、バスには難題が横たわっています。バスは電車のように電線で地上と繋がっていないのです。

その上バスの場合、ルートが複雑だし、しばしば渋滞に巻き込まれます。路線別に待ち時間が示せれば、中山間地域なら喜ばれるはずですが、これが意外に難しいのです。

現在の位置は、お馴染みのカーナビと同様に、人工衛星の利用でかなり正確に決めることができます。その上、目的地までのおおよその所要時間も予測が可能です。

しかしバスは数が多く、個々に動きますし、客の昇降もあります。路線は複雑で渋滞と遭遇すれば乱れてしまいます。それだけに、誰しも路線ごとの待ち時間を知りたいのです。

乗用車やトラックのように個別に到着時間を計算したのでは複雑で高くつきます。コストを下げるためにデータをすべてセンターに送って分析、管理する方式を開発したのです。

その結果は、電波でそれぞれのバスやバス停に間違いなく送り返す必要があります。この仕組みは、簡単そうで意外に難しかったと話してくれました。

これまで主要メーカーの多くは高額な車載専用機を作ってきました。そのため車両への専用取り付け装置が必要で、載せ替えの自由度も損なわれ、高価でした。

2017(平成29)年春の中国地域ニュービジネス特別賞に輝いた広島市の(株)タウンクリエーションは、その点に特に留意して納期が短く低価格で使いやすいものを作り上げました。

代表取締役の前 紅三子(まえ くみこ)さんは、まずインターネット環境で稼働するクラウド型システムをサーバーに採用、どこでもリアルに運行管理を可能にしました。(写真3)

(写真3) (株)タウンクリエーションの代表取締役 前 紅三子さん

その上、バスに装備するGPS車載機には汎用性のあるアンドロイド端末を利用しますから、リプレイスのときは車載機の入れ替えだけで利用が継続でき安く済みます。(写真4)

(写真4) システム全体の概念図

表示はバス停のポールに限りません。顧客は誰でも、QRコード、WEBサイトなどでスマートフォン、タブレット、パソコンに5カ国語で取り込めるというのです。(写真5)

(写真5) 新型のBUSitバスロケーションシステムでのバス到着時刻表示方式。(中央の「it」のところにスマートフォンやタブレット、パソコンをかざすとバスの到着時間が読み取れる)
※写真1~2:筆者撮影
写真3~5:(株)タウンクリエーションからの提供
さらに発展を目指して

伺うと、社員5名の小さな会社だと謙遜されます。でも、技術レベルは高くて、「バスロケーションシステム」の名で特許も取得されています(特許第5216931号)。

この方式は2016(平成28)年から実際に稼働中で、導入実績はバス会社18社、路線数2100余りといいますから素晴らしい。そしてさらに幅広い利用も考えているという説明でした。

たとえば、タクシーの配車、運送トラックの運用、幼稚園などの送迎バスの運行、警備会社の配車といった多様な動態管理に迅速に応えることが可能だといわれます。

さらにインターネット環境で本部のサーバーに繋げれば、運転者、あるいはバスガイドの簡単な操作で外国語によるバスの車内放送や案内を行うこともできるといいます。

近くオリンピック・パラリンピックを迎えます。観光立国を願うわが国としては、このような隠れたニーズを掘り起して利便性に富む社会の実現に挑みたいものです。

(株)タウンクリエーションは2015(平成27)年度に公益社団法人ひろしまベンチャー育成基金の「ひろしまベンチャー奨励賞銀賞」を、またその翌年にはDBJ女性新ビジネスプランコンペティションの「DBJ女性起業事業奨励賞」を受賞されています。

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2017年12月1日掲載

Copyright 2017 Chugoku Bureau of Economy,Trade and Industry.

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