エッセイ│てくのえっせい 371

名所の砂でお土産グッズ

顔写真

広島工業大学名誉教授
中山勝矢

最近は「ゆるキャラ」と呼ばれる個性豊かなマスコットの新顔を見かけます。県や市町村、あるいはイベントなどのシンボルとしてお目見えし、人々に親しまれています。

子どものころよく目にしたのは、セルロイド製のキューピーさんでした。ピンクの直立した裸の幼児なのですが、額に下がる茶色の毛が何とも可愛く、愛嬌がありました。

生みの親は、米国の女性イラストレーターだったローズ・オニールさん。世に出たのは1909(明治42)年といいます。モチーフは、愛の天使キューピットだったそうです。

この隠されたメッセージは、世界の人々に受け入れられ、国境を超えて親しまれるマスコットに育ちました。わが国では「キューピー」の名でマヨネーズが売られています。

世界に絆を生み出す

セルロイド製のキューピーも、はじめは平面的に印刷されたイラストでした。後には背後からの絵も提供され、切って貼り合わせれば立体感が出るといった工夫もされました。

ほぼ10年後にミッキーマウスやパイプをくわえたポパイなどが登場します。映画やテレビの時代になり、表情や仕草が豊かになり、性格が細かく描かれるようになりました。

ギスギスした時代にもかかわらず今日でも、世界の人々から愛されるキャラクターが数多く誕生しています。それらは知らずしらずに人々の間に絆を作り出しているといえます。

お土産グッズは、人形に限りません。話題の場所から採った粉や砂で何かを造ろうと考えた人がいます。例えば思い出の競技場の土で記念品の足形を造るアイデアです。(写真1)

(写真1) 鳥取砂丘の砂で造った世界陸上ジャマイカ代表選手の手型(上)と足型(下)

鳥取市のモルタルマジック(株)の池原正樹社長さんがその人で、ビジネスは軌道に乗り、平成29年度第25回中国地域ニュービジネス大賞で優秀賞を受けられました。(写真2)

(写真2) モルタルマジック(株)の池原正樹社長

総会と表彰式の日、会場のロビーにはいつも受賞企業の展示コーナーが設けられます。そこに並べられた沢山のグッズと資料を前にして伺った話には、目が開かれる思いでした。

受賞の内容は「風合いを残した状態で粉体をさまざまな形に固める」技術です。聞けば、このニッチ市場を狙う技術を持っているのは自社だけ、オンリーワンだというのです。

固めるには、接着剤や型が必要なはずです。それに加圧と加熱も要るように思えたのですが、企業秘密のためか、その点は残念ながら聞けませんでした。

これからは、単なるお土産では観光客の気持ちを引きつけられません。熊本県のキャラクターである「くまモン」も、阿蘇山の火山灰で造ってあれば目を引きます。(写真3)

(写真3)阿蘇山の火山灰で造られたお土産、熊本県の「くまモン」

鳥取砂丘の砂で造ったゲゲゲの鬼太郎も土産物になっていました。採取禁止場所以外で入手した砂でも話題性に富むので、多くの観光客が実際に手に取って見るといいます。

埋もれた資源の活用

話題性から探せば桜島の火山灰、富士山の土、土俵の砂、甲子園球場の土、ワイキキ海岸の砂など浮かびますが、月の砂なら最高。すでに研究に着手しているとは驚きでした。

また全国で放棄されている資源採取の残渣、不要となったもみ殻、貝殻、茶殻までも視野に入れて、再活用の道を探っているとのこと。思わず身を乗り出してしまいます。

原料にはこういった粉体を使い、話題のキャラクターをモデルにその土地ならではの商品を育てていきたいという社長の夢は大きくて、話は尽きませんでした。(写真4)

(写真4)砂を固めて造られたご当地マスコット
※写真は全てモルタルマジック(株)からの提供

創業は平成27年ですが、鳥取砂丘の砂から土産物を造る事業は平成22年からで、さらに桜島の火山灰を活用した土産物は平成26年に始めたそうです。苦労が忍ばれます。

キャラクターグッズは、人知れずコミュニケーションの役を果たしています。お土産に買い求めたグッズを毎日眺めているうちに、心が結ばれてくることを感じないでしょうか。

キャラクターグッズという単なるモノを物語の語り部に昇格させ、さらにそこにこめられたメッセージをお互いに感じとることで新しい時代が開かれて行って欲しいものです。

記事一覧に戻る

経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2017年9月1日掲載

Copyright 2017 Chugoku Bureau of Economy,Trade and Industry.

ページの先頭へ戻る