エッセイ│てくのえっせい 370

ブランドバッグのシェアリング

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広島工業大学名誉教授
中山勝矢

「衣替え」という言葉があります。春から夏、秋から冬と季節の変わり目に、衣服を改める習俗ですが、驚いたことに平安時代の宮中に始まり、千年の歴史があるといいます。

制服を着用している警察官や駅の職員さんは、今でも日を決めて一斉に衣替えをしています。町を行く人も、それなりに着衣を替えるため、急に季節感が身辺に溢れてきます。

そうすると装身具やハンドバッグも、それに相応しいものにしたいと考えるのはもっともなことです。その気持ちに応えようと、関係者はそれぞれ知恵を絞ることになります。

潜むニーズに挑む

珍しく、すいた電車で席に座れたときがありました。そうしたら、前にいる女性客の抱えるバッグが気になり、それとなく見比べると、色も形も似たものがありません。(写真1)

(写真1)様々なハンドバッグを抱える女性客(執筆者撮影)

確かに、他人が同じものを持っていたら嫌でしょう。そうした客の気持ちに配慮してデザインし、品ぞろえをすれば、その種類は膨大な数になり、選ぶのも大変です。

外出の目的やその時の服装に合わせて、手持ちの中から選べる人も少なからずいます。でも良い品は安くないので、思ってもできず、我慢している人も大勢いるのです。

そうしたことを考えていたら、この課題に挑んでいる企業の方に、平成29年度の中国地域ニュービジネス協議会の総会でお会いできたのです。

それは、東京の六本木ヒルズ森タワー19階にあるラクサス・テクノロジーズ(株)(社長は児玉昇司氏)の広島本社を担当する川本康博副社長さんでした。

この総会で中国地域ニュービジネス大賞の特別賞に選ばれた事業は、会費制で行うブランドハンドバッグのシェアリングサービスだったのです。

資料によると、会費は月々6,800円。それで18,000種類を超えるブランドバッグを送料なしで無制限に使えるとありますから、女性にとってまさに夢のような話です。

宅配で届けられたバッグは、使用した後は所定の箱に入れて返送すれば終わりなのです。IT技術をフルに活用して手続きを簡素化している点は、注目に値します。(写真2,3)

(写真2)シェアリングされる様々なハンドバッグ
(写真3)カタログにあるシェアリングシステムの説明
※写真2,3はラクサス・テクノロジーズ(株)からの提供

顧客の認知、利用率が国内で1位、商品の種類が業界トップ。さらにユーザー所有のバッグを他のユーザーに貸し出す CtoC プラットフォーム化も進めています。

ITによるビジネス化

ラクサス・テクノロジーズ(株)は、平成18年に4人で創業し、現在はスタッフが65人です。自社開発の英会話教材の販売は、平成21年度から7年連続日本一を達成しています。

これも優れたIT技術によるものと考えられます。ブランドバッグのシェアリングサービスの方は、すでにニューヨーク、ロンドン、パリなど海外38都市で展開中なのです。

いま住んでいる団地で、若い父親の一人から「おもちゃとりかえっこまつり」の提案がありました。子どもの持ってきたおもちゃにポイントを付け、交換させるというのです。

子どもは少し遊ぶと新しいものに関心が移っていきます。その必然ともいえるニーズを踏まえた提案で、ポイントの査定は親がしても、欲しいおもちゃの選択は子どもがします。

現金ではなく、ポイントで交換が成り立っていくのを見ていて、未来を感じました。他人が手を触れていたことについては、何らのこだわりも持っていません。

中学生の仲間では、親に買ってもらったブランド物の財布を、友だちも持っていたといって、忽ちリサイクルショップで別のものと交換してきて、親を嘆かせたと聞きました。

こうした感覚の変化は、無視できません。これまでの生産から流通、消費に至る経済の仕組みに、近い将来、大きな変動を巻き起こすような気がしてなりません。

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2017年8月4日掲載

Copyright 2017 Chugoku Bureau of Economy,Trade and Industry.

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