エッセイ│てくのえっせい 368

広く潜在需要に目配りをする

顔写真

広島工業大学名誉教授
中山勝矢

いまみかんが出盛りで、スーパーの売り場に積み上げられています。古くは冬の温州みかん以外は夏みかんでした。今日では味の良い新顔が次々と登場してきています。(写真1)

(写真1)スーパーの店先で積みあげられたさまざまなみかん(執筆者撮影)

調べたら何と温州みかんだけでも100種類以上、それ以外も85種くらいあるそうです。こうした品種改良は生産者の努力の成果だといえます。世界でも珍しい国なのです。

柑橘類全体の国内生産量第1位は愛媛県です。でもレモンに限れば広島県の年間の生産量は4000tで、全国シェアは約7割に達し、日本一なのです。

問題に目を注ぐ

瀬戸内海沿岸部、とくに島嶼部の多くは花崗岩の風化土壌であるマサ土からできていて、保水性と保肥性に乏しいのです。こうした土地は野菜や果樹栽培に利用されてきました。

そのため果樹園の多くは土地が平地でなく、必要な器具を持ち込む場合も、収穫物を運び出すときも容易ではなく、高齢者から敬遠されてしまう状況にあります。

一年を通じて温暖で、太陽の恵みに富むというのが、瀬戸内海沿岸部の特徴で、柑橘類の生産に適しています。しかし狭く急斜面のため道路が作れず、作業はきついのです。

岡山市の株式会社ニッカリさんはこの問題を取り上げ、現場環境を変えずに設置可能な急傾斜地用の物資・人員運搬システムを開発して第6回ものづくり日本大賞に応募されたのです。

システムは比較的単純で、主要なものはパイプとそれを保持する支柱なのです。このパイプをレールにしたモノレール方式のため、施工幅が1m未満であっても作業可能なのです。

また現場に合わせて施工できる柔軟性があり、場所を取りません。1966年に開発を始め、それ以降50年間の累計販売台数が約75,000台といいますから、拍手したくなります。

これまでオンリーワン製品として全国に広まりました。類似品があるとしても国内シェアは50~60% 。欧州の農業市場を中心にこれまで世界の約10カ国に施工してきました。

モノレールの動力源はガソリンエンジンや電気モーターで、その軸の先の歯車とパイプにつけられた凹凸型の歯の噛み合わせで、荷を載せた台車を牽引してゆきます。(写真2)

(写真2)みかんを運ぶモノレール(パイプに跨る左のエンジンが、右側の篭に入っているみかんを牽引している)
さらに改良を重ねて

初期には2サイクルエンジンを使用しましたが、環境問題があって4サイクルエンジンに切り替えたところ、急勾配の場所で潤滑油が途切れるというトラブルが起きたのです。

この問題を克服するために、エンジンを水平に保持する機構を開発して組み込んでいます。またさらに安全性を強化するためにブレーキを3重にしてあります。

写真2は、取りたてのみかんを篭に入れて運んでいる様子ですが、谷状になった地形に渡された移動用のパイプにより、難なくみかんが頭上を運ばれていくことが分ります。

このモノレール方式の前に索道方式と呼ばれる運搬システムがありました。これは見通せる2点間にケーブルを張って運ぶため、斜面に沿った敷設ができない弱点がありました。

現在の標準モデルでは、積載量300kgになっていますが、これでも人力による運搬量30kgの10倍に当たる量なのです。さらに要望があれば3tまでは特注可能だといいます。

せっかく品種改良に精を出しても、収穫や搬出に手間がかかったのではどうしようもありません。いまではみかんに限らず、梨、ぶどう、桃、柿、筍からも要望が届くのです。

さらにいまでは、土木工事や災害復旧工事の現場用として資材や重機の運搬機能を備えたモノレールも注目を浴びるようになっているといいます。(写真3)

(写真3)広島市安佐南区土砂災害現場に土木工事用の資材をモノレールで運んでいる例
※写真2,3は 株式会社ニッカリからの提供

他にも観光用、住宅用として展開が進んでいる状況です。それで希望企業に呼び掛けて昭和48年に9社でモノレール工業協会を設立し、普及促進に努めているという話でした。

創業は草刈機からスタートして、ある段階でこのようなユニークな技術の開発に挑み、実用化、普及への努力、国際的な展開など、目が開かれる思いです。

こうした成果は高く評価され、第6回ものづくり日本大賞では株式会社ニッカリ(代表取締役杉本宏氏)のモノラック部技術課の池田彰美さんが中国経済産業局長賞を受賞されたのでした。

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2017年6月2日掲載

Copyright 2017 Chugoku Bureau of Economy,Trade and Industry.

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