エッセイ│素敵・発見!マーケティング

イタリアの小さな村の食材探し

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株式会社クリエイティブ・ワイズ 代表取締役 三宅曜子

7月末に12日間、中北部の小さな村で主に世界遺産になっている場所を中心にイタリアへ旅行した。

イタリアは毎年のように行っていたが、中北部エリアで、しかも交通網があまり整っていない、どちらかというとへんぴな場所に行くのは30年ぶりで、久しぶりの旅なのでどのように変化しているかも楽しみであったが、特に今回は『イタリアの味はマンマの味』と言われているように、家庭の味を生み出すための食材や調味料探しをテーマに設定した旅にした。

30年前にはトーマス・クックの時刻表を片手に、電車やバスを乗り継いで行ったが、その後は行きやすいミラノ、フィレンツェ、ローマ、ジェノバなどに毎年行っていた。

コースはミラノからバスでリビエラ海岸沿いの街、ラ・スペツィア、そこからローカル電車で世界遺産のチンクエ・テッレの村々。そこからジェノバへ。ジェノバからバスで芸術の街でパルマハムが有名なパルマ、そこからやはり世界遺産の古都モデナへ。その後ヨーロッパ最古の大学の街ボローニャへ。翌日はバスでモザイクが有名な世界遺産のラヴェンナに行き、その後世界で5番目に小さな街で、やはり世界遺産のサン・マリノへ。いったんボローニャへ戻り、世界遺産で塔が有名なサンジャミーノへ行き、同様に世界遺産のシエナへ。翌日シエナからトスカーナの美しい世界遺産のピエンツァへ。その後最大の難所、狭い橋1本でつながっている、まるで万里の長城のような過酷な坂道と階段を登り、頂上にある世帯数20軒しかない、美しい村協会認定のチヴィタ・ディ・バニョレ-ジョへ。そこから下りて世界遺産であるオルチャ渓谷近くのレストランでアグリツーリズモ。最後はローマから日本に帰国。この名前も知られていない小さな村々は、30年前とほとんど変わっていなかったのが嬉しかった。

今回はイタリアの小さな村や街で出会った食材を中心にご紹介したい。

チンクエ・テッレの5つの村

チンクエ・テッレとは「5つの土地」という意味で、険しい海岸線に点在する5つの村は、リオマッジョーレ、マナローラ、コルニリア、ヴェルナッツァ、モンテロッソ・アル・マーレと呼ばれていて、200人の村から大きな村でも1000人程度の小さな村が1000年程前に要塞として作られたため、当時の行き来は船のみ。近年になって鉄道が敷かれたものの、崖に建つ家はレンガ1個から人が運んで造り上げたことでも有名だ。

ここではリグーリア海岸の名物、レモンから作るリキュール「リモンチェッロ」や、ねじってつくる珍しいショートパスタ、山沿いで育てるブドウから作る白ワインなどが有名。


世界遺産で要塞の街チンクエ・テッレは昔は海からしか行き来できなかった面影が残る。夏は海水浴客が多い。高台の住居はカラフルで美しいがすべて人力のみで建設された。

まるでインディカ米のような細長くて短く、ねじっているショートパスタは、ジェノベーゼなどによく合う。食前酒や食後酒によく合うリモンチェッロは甘いがアルコール度数は高い。凍らせてキンキンに冷やして飲む。
豊かな海辺の街ジェノバ
ジェノバで見かけた傘のオブジェ

リグリア海に面した湾岸都市、真夏のジェノバは、やはり暑かったが、なぜか細い小道に傘のオブジェがあった。雨を望んでいるのか、日差しを避けるためなのか、カラフルな傘がユニークだった。

私がジェノバを訪れた一ケ月後にメインの高架橋が崩落してしまったが、街中にあるガラス張りのエレベーターで上からジェノバの街が眺められる場所も、非常に古いため少し気になる。

ここの食事は海沿いだけのことはあり、シーフードが中心で、味はとても良かった。

ハムで有名なパルマ、世界遺産のモデナ、スパゲッティボロネーゼで日本でも有名なヨーロッパ最古の大学のあるボローニャへ

言わずと知れた食と芸術の街パルマから世界遺産で北部の街モデナ、その後ヨーロッパ最古の大学があるボローニャへ。

パルマではむろんパルマハムとその生ハム、モッツァレラチーズとトマトのカプレーゼで夕食をとった。赤ワインももちろん合わせて。イタリア人はとてもよくワインを飲む。

毎回、私も行くたびに毎日赤か白のワインを飲むが、多分空気が乾燥しているなかでワインがよく合う土地柄だからだと思う。ボローニャでは薄く切って食べる大ぶりなボローニャソーセージとワインを合わせた。日本でも有名なスパゲッティボロネーゼはきしめんタイプのタリアテッレにたっぷりのひき肉。畜産が盛んなエリアなので、どうしても肉料理が中心になっている。ここでは太ってしまうのではとヒヤヒヤ!


イタリアではカプレーゼもダイナミックサイズ(左上)。パルマハムだけでなく、ハモン・セラーノの工場では1本の蹄付きハムがびっくりするような安い価格で売られていた(右上)。ボローニャソーセージもとても大きい(左下)。ハモン・セラーノを1本抱えて持って帰りたかった!
世界遺産でモザイクの街ラヴェンナ、世界5番目の小さな国家で世界遺産のサンマリノへ

内部の側面と壁のモザイクが素晴らしいサン・ヴィターレ聖堂は旧約聖書を題材にしており、ピザンティン帝国の皇帝ユスティニアヌスと皇后テオドラの黄金に輝くモザイクが見事だ。素材は金やラピスラズリ、アメジスト、ルビーやサファイアなどの宝石。光が入るとまぶしいほどの輝きを増すモザイク画が街の中に点在している。ここはアートと装飾が上手に融合した古代都市である。

私はモザイク美術を見た後、有名なレオナルディのバルサミコ酢の15年ものと12年ものを購入。創業1871年の老舗メーカーで、日本には6年もの以上は出ていないが、15年ものはまるで、こってりとした蜂蜜のような艶と、樽で長く熟成させた風味が抜群で、チーズに少し垂らしていただくと最高に幸せな気持ちになるのだ。


細かなモザイクが素晴らしいサン・ヴィターレ聖堂(左)。12年もののバルサミコ酢はワインのように樽で熟成させる高価な商品(右)。

その後世界遺産で世界で5番目に小さな共和国、サンマリノへ。イタリアには世界一小さな国、バチカン市国があるが、そことは全く違う山頂にある国なのだ。しかし高台ではあるがケーブルカーで登れるのが嬉しい! さっそく頂上へ。

ここからの眺めは最高。眼下にはテラコッタの街並みが小さく並んでいるのが見える。ここで有名なのが何といっても共和国なので、その切手やスタンプを購入したかったが、7月のため、ドイツや北欧の寒いエリアからの観光客が多く、郵便局にまで行ったが手に入らなかった。そのかわり、生ハムやペコリーノ、パルミジャーノ・レッジャーノのチーズなどがのったオープンサンドとビールをお昼に食べた。眼下に見える景色も素晴らしく、リラックスできたランチタイムだった。


テラコッタの町並みが小さく並んで見えるサンマリノ(左・中)。サンマリノでお昼に食べたオープンサンド(右)。
トスカーナの小さな都市で世界遺産のピエンツァからやはり世界遺産のオルチャ渓谷、農家レストランで昼食後、同じく世界遺産の天空の街チヴィタ・ディ・バニョレージョで過酷なトレッキングを!

この日は行程中最も過酷なエリアに行った。真夏の日差しが痛いほどの中で、なんと日傘をさすのは日本人と中国人だけだとか。これはフランスでも言われたが、ヨーロッパの人はどんなに暑くて日差しが強くても帽子も日傘もささずに歩く。暑さに強いのだろうか。日に焼けたいのだろうか。

以前から不思議に思っていたが、昔からそういわれてきたため、私はやせ我慢して日傘もささず、ひたすら日焼け止めを塗りながら進んでいった。

世界遺産の場所は歴史的にみても非常に古い場所が多く、道は石畳が通常。古いので凹凸がすごい!しかも階段や坂道ばかりが続く。今は世界遺産エリアには車が入れないため、車は街の入り口までしか行けない。その後はひたすら歩き続けるのみ。

私は昨年の秋に右足の甲部分を剥離骨折してから9か月。まだしっかりと骨が付いていないため、足をねじったりすると大変だ。しかも日傘をさすと、すぐに日本人だと思われて盗難などの被害にあうためそれもできない。しかし、離合もできないぐらい細い橋1本で結ばれている遥かかなたの高い山の上にある世界遺産の街には何としても行きたい。やや不安を抱えながら、覚悟を決めてチャレンジすることにした。

まずピエンツァへ。この街は小さいながらもいたるところに素敵な彫刻やオブジェなどがあり、歩いていても楽しい。世界遺産ということだが、見方によれば現代アートの宝庫でもある。


ピエンツァの街中にある素敵な彫刻やオブジェ

ここの名物がイノシシのサラミ。一般的なサラミより味が濃厚で臭みもなく食べやすい。しっかり試食をしてきた。その後、昼食で農家レストランへ。ショートステイのアグリツーリズモだ。レストランでは地元でとれた野菜が中心で、それにハムやチーズ、最後にはビスコッティがでてきた。ビスコッティはビスケットの原型で私も時々作るが、素朴でシンプル、ピスタチオをたっぷり入れてどこか懐かしい味がする。

毎日飽食気味だったため、このシンプルさがとてもうれしく、写真を撮るのを忘れてしまった!


農家レストランやその周辺の風景

食事が終わっていよいよ最後の難関、チヴィタ・ディ・バニョレージョへ向かう。

現代から取り残された中世がそのまま残っている天空の街。万里の長城より凹凸があり、上り下りが非常にきつい。その街に行くためには300メートル以上の細い橋を渡らなくてはならない。もちろん車も通れず、かろうじて小さなバイクが階段を上り下りするだけが手立て。病人でも出たらどうするのだろう。その不便さからもはや20世帯が住むだけとなっている。ここは『死にゆく街』と言われ、刻々と風化が進んでいる。火山の噴火によりできた凝灰岩で出来ているため風や川の浸食が激しく、土地がもろいのだ。イタリアの小さな村は山の頂上にある事が多い。これは古代ローマ時代に敵から身を守るために自然の城壁を利用した丘の上に街を作ったためだ。

やっとの思いで頂上の街にたどり着いた。やはり来てよかった。素晴らしい景色と小さな村のコントラストがとても素敵だ。ここにある家はどれもかわいらしく、花や木で飾られている。上るのがやっとの思いだったため、一層満足度が高かった。


天空の街チヴィタ・ディ・バニョレージョの全景や切り立った崖、そして街中の様子
イタリアの魅力とは

イタリアは陽気な人が多く、言葉が通じなくてもなんとかなる国ということが一番嬉しい。また世界遺産がこんなに多いのに、あまり気取っていないところも良い。ほぼ毎年行っているのに、まだまだ未知の世界がたくさんある。

そして私が嬉しいのが「マンマの国」ということだ。家庭の味が一番という意識を皆が持っていてスローフード発祥の地。農薬や化学肥料も使わず、畜産は放牧が中心。その地域で厳格に守られている製法を代々受け継いでいるのも安心できる。例えば日本でパルメジャンチーズと言われているパルミジャーノ・レッジャーノは、ここでは一部の地域でしか作れない製法で、そこのチーズだけが本物の「パルミジャーノ」なのだ。エミリア・ロマーニャ州の狭い地域で作られ、厳しい検査に合格したチーズだけがこの名前を名乗ることができる。

生産指定地域は、パルマ~レッジョ・エミリア~モデナに限られていて、これ以外の地域で作るものは「グラナ・パダーノ」と呼ばれる。パルミジャーノは、パルミジャーノ協会によって厳しく品質管理が行われている。牛の餌から作り方、熟成方法まで細かく決められており、幾度となく行われる検査に合格したものだけがパルミジャーノとして認められる。この製造過程は細かく決められており、添加物は一切入らない。私は現地でカットしてもらい、真空パックにして持って帰った。

またイタリアではとても大きなオリーブの木をよく見かける。オリーブの木は100年以上のものが多く、とてもおいしいオリーブの実やそれからオリーブオイルが作られる。三代続いて初めて本格的なオリーブオイルができるのだ。今回も小さな村に行くたびに、大木に実ったオリーブをたくさん見た。これも大好きなのでしっかり買い込んで日本に戻った。


① オリーブの大木 ② ①の木に実っているオリーブの実 ③ 本格的なパルミジャーノと黒コショウ入りチーズ ④ ポルチーニとトリュフのペースト、カシューナッツのペースト、ジェノベーゼペースト2種 ⑤ オリーブオイルとオリーブ ⑥ ペペロンチーノミックスハーブ2種、ドライポルチーニ ⑦ イカ墨パスタ、ショートパスタ ⑧ さくらんぼのリキュール「ジンジャ・デ・オビドス」 ⑨ 微発泡赤ワインCELLA

※写真は全て筆者撮影。

マーケティングコンサルタントとして、中小企業支援及び指導、商業活性化事業、まちづくり事業等、顧客のニーズを的確に捉えた市場開発とアプローチ手法等、幅広い分野におけるマーケティング全般のアドバイスを全国各地で手掛ける。また、平成19年度より地域資源活用事業の政策審議委員、国会での参考人をはじめ、全国で地域資源を活用した事業推進、農商工連携事業、JAPANブランドプロデューサーなど幅広く活躍中。

  • 経済産業省地域中小企業サポーター
  • 同、伝統的産業工芸品産地プロデューサー
  • 中小企業基盤整備機構経営支援アドバイザー
  • 同、地域ブランドアドバイザー
  • 内閣官房 地域活性化伝道師
  • 同、クールジャパン地域プロデューサー
  • 広島県総合計画審議会委員 他

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2018年9月7日掲載

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