エッセイ│素敵・発見!マーケティング

参加型 街の活性化策とは

顔写真

株式会社クリエイティブ・ワイズ
代表取締役
三宅曜子

街を活性化させるため、各地で様々な取り組みが行われているが、私も以前から国内の様々な地域での活性化策のお手伝いをしてきた。

その中で、3年前から実施している山口県防府市の活性化策で、本来の目的である『市民が参加しやすい環境づくり』の内容をご紹介する。

そもそもの発端は『防府鱧塾』から

元はと言えば、平成17年にスタートした、防府で多く水揚げされる鱧を地元で美味しく食べてもらえるよう、また難しい骨切りなどを若い調理人に先輩から指導する仕組みづくりとして、『防府鱧塾』を立ち上げたことからだった。

当時は防府市民も鱧を食べることがなく、ほとんどが京都に送られる状況だったが、この会を立ち上げたことで、防府の鱧は市民や周辺のエリアからの観光客や、その後JRのデスティネーションキャンペーンで西日本中に知られるようになり、防府の夏の風物史としても認知されることとなった。

その当時から、街の活性化策としての『防府らしさ』を提案するために、『防府鱧弁当』などの開発サポートを行ってきたが、その後、国の支援事業などに採択され、ますますクローズアップされるようになった。

その後、平成26年からは、近隣で養殖を行っていた車海老を防府でも行う企業が出てきて、試行錯誤の中で『防府雷神海老』と銘打ったもの、また防府の佐波川流域での良好な栽培条件により多く作られるようになった自然薯『山神芋』が防府の名物素材となり、防長三白になぞらえた『防府天神鱧』、『防府雷神海老』、『防府山神芋』が誕生した。

このように、個性的で高付加価値な素材が揃ったところで、次に考えたいのが地元と共に山口、福岡、広島、島根県内などからの観光客誘致のための他にはない仕掛け作りだ。

東京銀座で行われている『BAL』を防府でできないか?

東京の銀座で自然発生的に生まれた『BAL』。これは一杯の酒類と小皿料理1皿で、ちょっと飲みをしながらいろいろな店をまわるシステムだが、元はスペインが発祥で一晩中呑みあかし、しかもあまり金額がかからないため、お財布にも優しい仕組みだ。

おおよそ1軒が日本円で500円~1000円以下。知らない人同士が仲良く肩を並べ、おしゃべりをするコミュニケーションの場でもあり、今では世界各国で取り入れられている。

これを防府でできないだろうかということで、国の支援事業で新たな観光開発として、『産業女子の産業観光』として、その中に『防府BAL』を組み入れ、点在する防府市内の飲食店に気軽に入り、ちょっと飲みとその店の自慢の味を少し食べることで、入りにくい状況を打破しようとする取り組みを始めた。

今年で3回目の『防府 幸せよくバル』というまちバルイベントが6月17日(土)に開催され、私も今回は一般客として参加した。同行者は、防府の活性化事業にも参加してくれている40代の女性2名。私を含め、全員調理師の資格を持っているため、比較的厳しい目で見ることができた。

防府のまちBALには23軒の参加店が手を挙げてくれた。まずBAL参加店や防府の観光施設、観光案内所、商工会議所、観光協会などであらかじめ『幸せよくバルチケット』を税込2800円で購入。この中には700円相当のバル券4枚綴りとなっており、1枚のバル券で1フード+1ドリンク、後日参加店での1ドリンクサービス券も付き、700円分のタクシー券としても使える。営業時間は店舗によって違い、昼の12時から24時までと幅広く、昼や仕事帰りに活用したり、4枚を分けて使う人もいる。

まちバルパンフレット
まちバル参加店
観光客にもわかるような地図付き

私は広島から車で防府まで行き、ホテルを先にチェックイン。18時半に2名と合流。リサーチも含めて行こうということになり、まずは少し離れている『鱧塾』塾長の店『桑華苑』へ向かった。その途中で、数人の女性たちと出会い「もう売り切れで~す!ショック!」と言われたが、まずはどのような料理なのかを知りたくて店へ。和食メニューで、桑華苑らしさがとてもよく出ており、さすがに地域一番店だけのことはあると感心。

一軒目『桑華苑』の情報

次に創作洋食料理の『レスト防府ジャンクション』へ。元競輪選手がオーナーの店で、「肉メニュー」と「地元野菜メニュー」が選べ、スパークリングワインなどバリエーション豊かなドリンクメニューがそろっている。私は肉メニューを注文。店内に入りきれない人たちが並んで待っているので、早々に次の店へ。

二軒目『レスト防府ジャンクション』の情報

「次は中華がいいかな」と、近くの『中華菜館 噢快餐(おこいさん)』へ。ここでは生イカのシュウマイやピータンの惣菜などがワンプレートに。

三軒目『中華菜館 噢快餐』の情報
四軒目『創作料理 尽』と五軒目『IZAC 佳×凛』の情報

すでにお腹がいっぱいではあるものの、新進気鋭の女性好みの和食店『創作料理 尽(じん)』へ。全国のこだわり日本酒などと丁寧に作られた和食のワンプレートを堪能。店内はやはり女性でいっぱい。遅くに行ったためにちょうどカウンターが空いていたが、少し前まで外に行列ができていたようだ。

まだ1枚チケットが残っていたため、最後に女性のための居酒屋『IZAC 佳×凛』へ。女性が一人で入れる居酒屋はあまりなく、女性オーナーが、そんな女性のためにオープンさせた店だ。たまたま魚肉ハンバーグを使った「魚ろっけバーガー」とドリンクのメニューであったが、すでに0時近くになっていたため、そのメニューはなし。ドリンク一杯飲んで出たものの、すでにお腹はパンパン!十分に満足して、「来年がまた楽しみね!」と言いながら、女性調理師3人は戻っていった。

この催しは地方の、特に外食産業で画期的な取り組みだと思う。一人では行きにくい店や、女性などがどうしてもドアを開けにくい店、また観光客など、価格設定がわからなければ入りづらい店なども多く、客にとっても店側にとっても絶好のファーストステップの取り組みとしてチャンスになる。同行した2人の女性調理師は、昨年初めて行ったBALの店に、その後気軽に何度も行っているようだ。やはり、地方ならではの、こだわった食材やドリンクメニューなどが手軽に試せる環境は魅力的だ。

今後、この取り組みが全国的に行われることで、国内外の観光客はもとより、地元ですら行ったことがない場所に足を踏み入れることができるため、BtoCを意識する取り組みとしても、また地域活性化としても大きな役割を果たすことになると思われる。

今後を楽しみに期待したい。

マーケティングコンサルタントとして、中小企業支援及び指導、商業活性化事業、まちづくり事業等、顧客のニーズを的確に捉えた市場開発とアプローチ手法等、幅広い分野におけるマーケティング全般のアドバイスを全国各地で手掛ける。また、平成19年度より地域資源活用事業の政策審議委員、国会での参考人をはじめ、全国で地域資源を活用した事業推進、農商工連携事業、JAPANブランドプロデューサーなど幅広く活躍中。

  • 経済産業省地域中小企業サポーター
  • 同、伝統的産業工芸品産地プロデューサー
  • 中小企業基盤整備機構経営支援アドバイザー
  • 同、地域ブランドアドバイザー
  • 内閣官房 地域活性化伝道師
  • 同、クールジャパン地域プロデューサー
  • 広島県総合計画審議会委員 他

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2017年7月7日掲載

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