生きているコンクリート
2023年10月2日
中山勝矢
豪雨による崖崩れ、河川の氾濫、地震による建築物の崩壊、それに火山の噴火など、心配事は増えるばかりです。気になると自然に、身近にあるコンクリートに目が行きます。
そうすると、意外なことに割れの入ったものが少なくないのです。国が定めた工業規格に沿っているはずですが、実状は破損が起きたままなのに驚かされます。(写真1)
中国地域ニュービジネス協議会は、今年の総会と表彰式を岡山で開きました。その優秀賞の一つが「バクテリアを用いた自己治癒コンクリートの製造販売」でした。

生きているコンクリート
古くからの石材に変わり、今日では、コンクリートが様々な建造物に使われています。砂や小砂利を混ぜて水で捏ねたモルタルを乾燥して固まらせたものです。
社会システムでは、建築物はもちろんのこと道路、橋梁、河川、護岸などに欠かせません。それがひび割れ、さらに脱落、崩壊を起こすのでは、不安は増すばかりです。
今回表彰された「自己治癒コンクリート」というのは有機物であるバクテリアとその餌となるポリ乳酸を配合したコンクリート製品で、コンクリートに混入して使われます。
このコンクリートにひび割れなどが起きたら、その隙間から浸み込む酸素や水分でバクテリアが活動を始め、炭酸カルシウムを出して割れを埋めるというものなのです。(写真2)
受賞企業は、1964年創業のコンクリート製品の設計製造販売施工を営む大和クレス株式会社で、公益財団法人岡山県産業振興財団の推薦があり、受賞候補にのぼりました。
いまや「コンクリートの老朽化予防」は大きな社会的な課題です。製品の長寿命化で、製造の際に発生する炭酸ガス(CO2)が減れば脱炭素化に大きく寄与するわけです。

また中山間地域の圃場整備地区における水路管理は容易でありません。このひび割れの自動修復機能の成功は、社会的な意義が大きいものと認められました。
2022年10月に広島県内の自治体向けに初出荷、他の自治体とも協議しているといいます。代表取締役社長は林美佐さんで、現在従業員は240名だとあります。(写真3)
なおこの自己治癒コンクリートには「Basilisk」という名がつけられています。表彰会場の周辺に設けられた展示テーブルで実物を見、手で触ることが出来ました。

記念額は「風」
中国地域ニュービジネス協議会では、創立以来「風」をスローガンとし、これを図案化した「額」を受賞者に差し上げています。(写真4)
表彰状は受賞者が受けますが、額の方は、社長の奥様か、近い方にご登壇願い、受けていただいています。これは企業の社会的信用増大に大きく寄与するといわれています。
この「風」が意味するところは、考えてみると浅くありません。風には新しい知識、商品、利用が「ここから広がれ」という願いが込められており、心に沁みます。
なお、オランダの技術を日本で取り扱う権利をもつ會澤高圧コンクリート株式会社が国内企業と提携して普及する際に、当社が成果を持って寄与したいと考えていると聞きます。
コロナ禍が収束するのに合わせて開催された総会と表彰式で、このような力強い成果が優秀賞に選ばれたことを嬉しく思いました。ますますの地域振興を風に託したい気持です。
