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素敵・発見!マーケティング

大正時代の古民家を自分たちで再生した、手造り感あふれる宿泊施設

2026年5月25日
株式会社クリエイティブ・ワイズ
代表取締役 三宅 曜子

鳴き砂で有名な島根県大田市の琴が浜の目の前に位置する場所に、大正時代の古民家を改造して、オシャレでクラシックな家具や調度品を自分たちで入れ込み、ゆったりとくつろげる宿にした女性がいる。
 北広島町でオーガニックのお茶やグッズ類を製造販売する『風土プロジェクト』のオーナーだ。
 宿の名前は「琴風亭(きんぷうてい)」といい、目の前に広がる海とそこに沈む夕焼けや、歩くと音が奏でる鳴き砂が素敵な場所だ。
 その向かいに位置する「琴風亭(きんぷうてい)」は、非日常のひと時を味わえるように、宿には間接照明と優しい寝心地のベッドやソファなど、すべて自分たちで揃えたものを置いている
 この宿泊施設を創った企業は女性がオーナーで、以前から「ナチュラル」、「オーガニック」、「環境を意識する」商品を製造し、JA道の駅やナチュラルを意識する店舗に直接販売している。私は彼女が考えて創った、生ごみを出さずに肥料にするコンポストを、力がない女性でも簡単に攪拌してコンパクトに肥料ができる「グルグルコンポスト」が『ひろしまグッドデザイン賞』で特別賞をとった時の審査員の一人だったため、自分でもバルコニーにこのコンポストを2個置いて、生ごみの軽減とナチュラルな肥料づくりをしている。その考え方が素晴らしく、その後いろいろとサポートをする中で、この古民家再生の宿泊施設「琴風亭」も支援しようと思った。
 女性でありながら、からだに良いオーガニックの材料の収穫から製造まで、パッケージのデザインやロゴまで自分でつくる。そして力仕事も難なくこなし、北広島町から大田市まで車を運転して往復するバイタリティは、一般の女性ではなかなかできるものではない。私も同性として、この考え方に共感し、できることをサポートしながら、ナチュラルな生活を目指す人たちの暮らしを一人でも多く知っていただきたいと日頃から考えていたため、まず「琴風亭」行ってみることにした。

田舎暮らしをナチュラルに、しかもオシャレにできる環境づくりとはとは

大田市は以前、国の事業で『TMO中心市街地活性化事業』のアドバイザーとして、地方行政にかかわっている商工会指導員などと一緒に数日街中に宿泊しながらサポートを行ったことがあったが、琴が浜には行っていなかったので、とても興味があった。ちょうどまさにアメリカで9.11事件があったその時だったので、印象的だった。
 まず、到着した時には海に夕日が沈みかけていたが、それでも美しい空の色だった。そして海の前にある「琴風亭」に着くと、彼女が自分で描いた墨文字ののれんがかかった古民家に入った。
 大正時代に建てられた古民家は見事に落ち着いたクラシックな室内になっていた。
 周りの障子も自分たちで張替え、ベッド周りには落ち着いて寝られるようにソフトな布地を梁から流している。天井をはがして梁を活かした高さのある平屋に、どうしても暗いため、壁面の上部に小さな明りとりの窓を創り、優しい光が入るようにされていた。クラシックな家具や調度品なども自分たちで揃えて落ち着きのある部屋が出来上がっていた。私も建築士(二級)であるため、様々な家のリフォームなども図面から描き上げてきたが、ここまで古い古民家を自分たちでリフォームしたことは素晴らしいと思った。
 この古民家の隣には朽ちかけたもう住めない古民家があり、そのまま放置していたら完全に廃墟になってしまうのだと嘆かわしく思ったが、向かいには外国の方がセカンドハウスとして、やはり古民家をリノベして素敵な住まいにしていた。
 人が住まなくなった家はどんどん劣化していく。今特に山間部や交通の便が悪い場所にある、住まなくなった家はとても多く、更地にすることもできず、災害が起きたら大変なことになるであろう場所がたくさんあるが、それをリフォームして住むためにも材料などが高騰しているため、大きな出費になってしまう。高齢者の住まいなどはさらに大変で、子供たちも都会志向で利便性が悪いこのような家をリノベして住もうと思う人がとても少なくなっている。この宿も長く空き家だったものを、空き家バンクを活用して修繕し、宿として蘇らせたそうで、昨年は春から11月の「神在月」まで予約が埋まるほどの人気となり、地域の魅力発信に一役買っている。修繕費の高騰など課題はあるが、こうした「再生」の取り組みは、これからの地方の在り方に一石を投じるものだと感じた。

自分を見つめなおす時間づくりの大切さ

琴風亭は、サステナブルな暮らしを体現する一日一組限定の宿だ。夕食には、地元の海で獲れた魚を中心に、手作りの塩麹や糠漬け、裏庭で育てた無農薬野菜のグリルが並ぶ。もちろん、調理で出た生ごみはコンポストで堆肥へ。電力も太陽光を活用するなど、自然の循環の中に身を置く心地よさを実感できる。
 ここはオーナーも女性で実際に宿泊のお世話をするのも娘さんのため、1人の場合は女性のみとし、今までの時期には魚の刺身などと、魚と野菜たっぷりの鍋物が中心だったようだが、この日は新鮮な鯛やアジの刺身に甘めの醤油がとても良くマッチして、久しぶりに甘くておいしい刺身を食べることができた。
 その日は私も一緒にアジの骨せんべいやかす汁などをつくり、間接照明の光の中で彼女と一緒に食事をした。
 今から夏になると、少し冷たい料理も出そうと考えていて、私はそのアドバイスも行った。
 近くには温泉施設もあるため、翌日に行った。この温泉にもよその地域から来られる方も多いという。私は熱いお風呂が苦手だったため入らなかったが、彼女はいつもここに入りに来るという。  私は日頃は広島市の中心部にある事務所と東京の事務所で仕事をしているが、コロナ前に毎月行っていたミャンマーの少数民族支援先の住居を思い出した。
 テレビもパソコンもなく、おしゃべりとクラシックの音楽で特別なリラックスした1日を過ごした。
 今ソロキャンプがトレンドになっているが、この感覚に近いものがあると思った。
 忙しい人ほど、いつもと違う時間と空間に自分を置くことは、新しい発想が生まれ、自分を見つめるときになると思う。
 夏になると、ソロキャンプのように、目の前の砂浜で朝食をセットして食べることもするという。
 ひと時の安らぎとゆとり、静かな環境やナチュラルな食事、落ち着いた寝床で朝までゆっくりと寝ることが、実はとても贅沢な過ごし方だとつくづく感じた。


琴が浜の夕日


琴風亭入口


室内1


室内2


ベッドルーム


ある日の夕食


琴が浜で朝食

著者 / 株式会社クリエイティブ・ワイズ 代表取締役 三宅 曜子

マーケティングコンサルタントとして、中小企業支援及び指導、商業活性化事業、まちづくり事業等、顧客のニーズを的確に捉えた市場開発とアプローチ手法等、幅広い分野におけるマーケティング全般のアドバイスを全国各地で手掛ける。また、平成19年度より地域資源活用事業の政策審議委員、国会での参考人をはじめ、全国で地域資源を活用した事業推進、農商工連携事業、JAPANブランドプロデューサーなど幅広く活躍中。

  • 経済産業省地域中小企業サポーター
  • 同、伝統的産業工芸品産地プロデューサー
  • 広島市産業振興センター経営支援アドバイザー
  • 内閣官房 地域活性化伝道師
  • 同、クールジャパン地域プロデューサー
  • 広島グッドデザイン賞、石川県、富山県 他ブランド審査委員 他


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