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素敵・発見!マーケティング

日本におけるHALAL(ハラル)市場について

2024年9月20日
株式会社クリエイティブ・ワイズ
代表取締役 三宅 曜子

 世界の人口の1/4 がイスラム教徒である。
中でも多くのムスリムが住む国はマレーシア、インドネシア、シンガポール、UAE(アラブ首長国連邦)で、世界で18億人の巨大な人口である。
来年の大阪万博の開催をふくめ、近年のインバウンドで日本に来日するムスリムの増加傾向にあることも注目したい。それに伴い、HALAL(ハラル)対応の食事などの需要も高まっていることも重要な要素だ。ハラル市場はコロナ禍前の水準に回復、2025 年までに2.7兆米ドル(約375 兆円)に成長 日本企業の参入機会も拡大している。
 今回は日本におけるハラル産業について考えたい。

ムスリムフレンドリーとは

 ムスリムフレンドリーとは、ハラル認証を受けることが何らかの理由で難しい場合に、できる範囲でイスラム教徒に対する配慮のある製品や施設やサービスを提供することや商品を意味する。
 ムスリムの人たちは宗教上、食べられないものがいくつかある。その宗教上の決まりに配慮した食材や食事をハラルフードと言う。日本に来る外国人の増加に伴い、日本でもハラル対応のメニューを提供するお店が増えているが、まだまだ少ない。
 私は新型コロナ前まで、数年タイ政府商務省からの依頼でタイに行き、現地の事業社の商品開発や展示会サポートを行ってきた。その展示会の中で、国際食品見本市が毎年行われていて、ブース全体の1/4 がハラルフードで、ブース入場前の特別展示にもハラル食品が多くあった。
 その頃は日本での食品見本市にはまだハラル食品は見かけることはなかった。
 タイの宗教は仏教が中心なので、イスラム教の人口はとても少ないが、世界全体の人口の1/4 がイスラム教ということで、輸出産業としてそのころから注目されていたといえる。
 ハラル食はイスラム法で食べることが許されている食材や調理方法で、禁止されているメインが豚肉とアルコールだ。
他にも食材の製造工程や調理に関して一定の作法が要求されている。味噌、醤油、酢なども原材料にアルコールが記載されているものはハラム(食べてはいけないもの)と考える。
肉でも牛肉、鶏肉、マトンなどは問題ないが、飼料にハラムが含まれているものを食べさせていると、食べてはいけない。また屠畜の仕方にもきびしい制約がある。
 外食産業では、調理器具と食器が一般の人たちが使うものとは分けていることも重要なポイントだ。
九州や関東でハラルのラーメンがムスリムの人たちに評判で、海外からのムスリムだけでなく、地元でも有名になっているチェーン店があるが、醤油などもアルコールは全く使われていないし、チャーシューも鶏肉で作っている。

私はタイの展示会でハラル食を多く試食したり、シンガポールやUAE で地元の人たちと一緒にハラルの食事を何度もしてきたが、どれも非常においしく、違和感は全くなかった。

広島のムスリムの人たちが困っていること

 広島には広島大学の留学生とその家族でムスリムの人たちが、特に東広島に多く住んでいる。また2015 年に広島県で初めて「イスラム文化センター」も設立されている。そこにはイスラム人が毎日行う礼拝所もあり、イスラム圏の人たちが来やすい環境が作られている。
他の自治体もムスリムの人たちを対象にした取り組みも多くなってきている。
しかし、まだハラルフードについてはよくわからないという人が多いのも事実である。
 東広島に住むムスリムの人たちは、特にイスラムのしきたりに合わせて屠畜された肉を地元で購入することができず、他の国から輸入した肉を使う場合が多いという。また醤油など、日本では一般的な調味料を使うことができない場合も多く、学校給食なども食べられず、弁当持参で学校に行く子供たちも多い。
 地元の食品や調味料のメーカーも若干ムスリム対応の商品を作っている企業も出てきたが、圧倒的に少ない。
 同じアジアでタイは非常に多くの企業がムスリムに対応した商品を多く出しているのに、日本はまだ少し先になるのかもしれない。

 その中で、先に紹介したラーメン店チェーンなどはムスリムフレンドリーの発想で対応しているが、これは非常にリスクも少なく、地元でもできるのではないかと思われる。
 例えば冷蔵庫も、厳密にいうと一般とムスリム用に分ける必要があるが、この考え方だと、その棚をハラル専用の棚と、非ハラル専用に分けると解決する。食器は置き場をハラル専用と非ハラル用で変える。調理道具も同様に置き場を変えておく。また、包丁やまな板などは最初から完全に分けておく。
 詳しくは非常に詳細に管理されているが、ハラルセミナーが開催されていたり、ホームページ等で研究してみると良い。

ハラルマークは国や認証制度の違いで多くあるその一部

タイ国際食品見本市ハラル相談ブース

タイ国際食品見本市ハラルブース1

タイ国際食品見本市ハラルブース2

タイ国際食品見本市ハラルブース3

タイ国際食品見本市ハラルブース4

タイ国際食品見本市ハラルメインブース

※写真はすべて筆者撮影

著者 / 株式会社クリエイティブ・ワイズ 代表取締役 三宅 曜子

マーケティングコンサルタントとして、中小企業支援及び指導、商業活性化事業、まちづくり事業等、顧客のニーズを的確に捉えた市場開発とアプローチ手法等、幅広い分野におけるマーケティング全般のアドバイスを全国各地で手掛ける。また、平成19年度より地域資源活用事業の政策審議委員、国会での参考人をはじめ、全国で地域資源を活用した事業推進、農商工連携事業、JAPANブランドプロデューサーなど幅広く活躍中。

  • 経済産業省地域中小企業サポーター
  • 同、伝統的産業工芸品産地プロデューサー
  • 広島市産業振興センター経営支援アドバイザー
  • 内閣官房 地域活性化伝道師
  • 同、クールジャパン地域プロデューサー
  • 広島グッドデザイン賞、石川県、富山県 他ブランド審査委員 他


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