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素敵・発見!マーケティング

日本の食事情を見直す!

2024年7月19日
株式会社クリエイティブ・ワイズ
代表取締役 三宅 曜子

 コロナ前まで、私は仕事とプライベートの両方で長年、海外に毎年行っていた。
 新型コロナが浸透してからは、渡航が禁止され、国内の移動もできなくなってしまったがこの時期にはWebサイト(例としてZoomやWhatsAppなど)で、海外とのコンタクトは取り続けていた。
 今は日本が円安の影響もあり、農家や畜産関連の事業者は、肥料や飼料などが高騰してしまい、それが消費者の購入につながり、野菜など食品材料そのものの価格が高騰している。農家や畜産関係者、漁業や養殖業者などに聞くと、『餌や水道光熱費など、必要なものすべてが高騰してしまい、やっていけるかが不安!』という声をよく聞く
 しかし、よく言われている『食品ロス』は、そもそも消費期限と賞味期限の違いのなかで、賞味期限間近になったもの、特に加工品などは賞味期限の一週間前から店頭で正規の価格ではなく、非常に安い価格になっていたり、販売されずに廃棄されたりする消費現場での実態がある。
 私は長年生産現場に行きサポートをしていたが、例えば野菜など生鮮品が実際に箱のサイズに合わないため、市場などに取ってもらえず畑に廃棄されているものや、加工に回されているものも非常に多いことにいつも驚く。
 今回は生産現場での食品ロスを考える。

生産現場で飼料用や生産者の畑に埋められる廃棄品を考える。

 生産された野菜などは規格、サイズごとに選別され、主に市場に出荷され、店頭に並ぶ。A品(正規品、秀品)はそのまま定価ベースで販売される。B品(優品規格外品)は、ちょっと形が悪かったり、曲がっていて箱にはいらなかったりしたもので、味が悪いわけでもないが、主に加工向けに出荷される。近年では、規格外品(訳アリ品)として量販店などに並ぶ作物もある。
 そしてC品(クズ品)の場合、作物によって家畜にも与えられないものもあり、結局畑に埋められたり廃棄の運命をたどることになる。
 作物によって違いはあるが、ある作物の収穫量をそれぞれに分けると、A品の秀品が全体の40%、B品の優品が20%、C品のクズ品が40%もあり、適正価格で取引をされるものは40%しかなく、B品の20%は安価でしか取引されず、C品(クズ品)の40%はほぼ廃棄となる。このC品については、傷みは別として、規格サイズに合わず、Sサイズより小さいものや太すぎるものなどが無条件でクズ扱いになり、市場には全く出回らないで廃棄されてしまう。
 これでは生産者が適正な所得を得ることが難しく、以前聞いたところ、生産者1家族の収入が年間200万円という。これでは生産者が適正な所得を得ることは難しく、生産面積の縮小や生産継続を断念せざるをえなくなり、消費者の口には入らなくなってしまう。
 友人の鳥取のブロッコリー農家で、結局廃業した女性は、収穫を夜中の3時から行い、日が出る頃にはきれいに箱にそろえて入れ、組合に持っていく毎日だったという。それで体調も悪くなり、結局辞めてしまった。しかもA品でもとても安い価格で取引されるため、いくら作っても収益にならなかったという。私は、よく送っていただいたが、甘くて茎までとてもおいしいものだったので、とても残念でたまらなかった。

北海道と中国地域でRenew Projectがスタート!

 野菜の収穫量がとても多い北海道で5年前から準備していたのが、見た目の悪さ、規格より、小さかったり太かったりして、食べるのには何も問題ない野菜を中心に、今後広がりを持たせて届けていくRenew(新たな価値を創造)のプロジェクトがスタートした。
 規格外品のみではなく希少品種を作付けしたものもRenew Projectに含まれる。
 このプロジェクトは、・付加価値を高める・持続可能である・生産者に還元されることで、この理念に賛同いただける各所とネットワークを構築して連携&協同によって推進ができれば、非常に意義のあるものになると思われる。

 このプロジェクトは困っている地域のモノを一方的に流通させるのではなく、ネットワーク、双方向でのビジネスで『売りたいモノを買いたい人とマッチングさせる』というシンプルな考え方だ。
 これをしっかりとまわせることができれば、生産現場での食ロス・SDGsにも貢献でき、生産者の思いを紡ぐ新たなストーリーになるはずである。
 私もこのプロジェクトに参加することにした。中国、四国地域にも、北海道にはない果物のB品、C品が多くある。特に柑橘類は東方面、特に北海道エリアにはほとんど出回らない。

 おいしいものを購入しやすい価格で、しかも加工することでさらに価値を上げるプロジェクトはこれから非常に面白い展開になるに違いない!

太さや細さがバラバラのにんじんはB、C品になってしまう

廃棄されるジャガイモ

行き場のない芋は澱粉工場に運ばれる

1トンコンテナのこのにんじんは数時間後に『クズ品』となっていた

傷みが早く市場に出回らない山わさび

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著者 / 株式会社クリエイティブ・ワイズ 代表取締役 三宅 曜子

マーケティングコンサルタントとして、中小企業支援及び指導、商業活性化事業、まちづくり事業等、顧客のニーズを的確に捉えた市場開発とアプローチ手法等、幅広い分野におけるマーケティング全般のアドバイスを全国各地で手掛ける。また、平成19年度より地域資源活用事業の政策審議委員、国会での参考人をはじめ、全国で地域資源を活用した事業推進、農商工連携事業、JAPANブランドプロデューサーなど幅広く活躍中。

  • 経済産業省地域中小企業サポーター
  • 同、伝統的産業工芸品産地プロデューサー
  • 広島市産業振興センター経営支援アドバイザー
  • 内閣官房 地域活性化伝道師
  • 同、クールジャパン地域プロデューサー
  • 広島グッドデザイン賞、石川県、富山県 他ブランド審査委員 他


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