1. ホーム
  2. ちゅうごく地域ナビ
  3. 素敵・発見!マーケティング ―過去の記事―
  4. 日本に伝わる、長く大切にしてきたものを供養する催し。
素敵・発見!マーケティング

日本に伝わる、長く大切にしてきたものを供養する催し。

2023年5月19日
株式会社クリエイティブ・ワイズ
代表取締役 三宅 曜子

今年のゴールデンウィークは大型連休で、新型コロナが終息気味ということもあり、旅行に出かける家族連れが多くみられた。
 私も横浜の実家と石川県輪島市商工会議所の輪島塗部会が行った「椀供養」のサポートを依頼されて 4日~ 5日に能登空港から輪島にある「輪島 SANGYO交流館」に行った。
 この「椀供養」は今年が2年目で、使えなくなった漆器を高野山真言宗西光寺から住職に依頼して供養してもらうもので、同じ日に山中塗や九谷焼の伝統工芸イベントが石川県各地で行われていた 。

なぜ、「椀供養」をするのか。

石川県には、漆器、陶磁器、着物など多くの伝統工芸があるが、その中でも、国の重要無形文化財に指定されるなど石川県を代表する伝統工芸として輪島塗がある。
 その特徴は輪島市でしか採れない輪島「地の粉」を使用していることにある。
 輪島で採れる「地の粉」は良質な土で、下地に使用することにより強度の高い漆器にすることが可能になった。器になる木は、通常椀には縦木を使うが、輪島塗は横木を使っているので割れにくい。くりぬいた椀に米粉、珪藻土、砥の粉を使い、紗の布を巻いてさらに強度が増してくる。
 何層にも塗った器には、彫りを入れた部分に金粉と銀粉を入れて模様を出す「沈金」や、蒔絵を施したものも多く、100を超える工程を経て出来上がる。

輪島塗の商品群

そのためより強固になっているだけでなく、壊れたとしても修復することもできるが、長年使って欠けてしまったり、色が褪せてしまい、修理しにくいものは、今までは各家庭での処理にこまっていて、それを「椀供養」として丁寧に供養したいと、輪島塗事業者が全国に提案して行われるようになった。
 今年が2年目で、海外からも供養してもらうために送られてくるものも含め約 50個の椀を並べて参列者が焼香した。最後まで使い切りたいという思いと、使った器に感謝することがこのような形となった。
 今注目されているSDGsの考え方からも、「長く使い、最後まで器を大切にする」ことは、非常に意義のあることだと思う。

「椀供養」の設え 高野山真言宗僧侶による椀供養の様子

「椀供養」が 行われた場所は、輪島朝市の近くにある「輪島 SANGYO交流館」で、隣には「輪島きりこ会館」がある。
 その中心部は広場になっていて、ここで和太鼓日本一になった和太鼓奏者が輪島御神事太鼓を打ち鳴らし、その後輪島の祭り太鼓で盛り上げた。

和太鼓日本一奏者の御神事太鼓演奏 子供たちの輪島祭り太鼓の様子

日本三大朝市の輪島朝市と世界初の「世界農業遺産」、能登輪島市白米町の白米千枚田

輪島には日本の棚田百選、また国指定文化財名勝の海に面した4ヘクタールの斜面に 1枚の面積が 18平方メートルしかない、 1004枚の小さな田がある絶景がある。
 私は20年以上石川県の仕事をしているが、この風景を見たのが初めてで、その美しさに驚いた。

まだ田植え前だったので水を張った田んぼだったが、これも壮大な風景だった。
 機械が全く入れない場所なので、人力で田植えから稲刈りまでを行うが、急斜面なので、相当の苦労だと思った。日本にはまだまだ知られていない場所が多くあり、それを知ることで自国の良さを再認識できる。これまで仕事が終わるとすぐに帰っていたが、連休の仕事だったため、これらを見ることができたのは幸せだ。
 2日間の輪島では、 2日目に大きな地震にあい、これも大変な経験だったが、それを含め、すべてが日本だとあらためて思った。

世界初の世界農業遺産「白米千枚田」

※写真は、筆者撮影

著者 / 株式会社クリエイティブ・ワイズ 代表取締役 三宅 曜子

マーケティングコンサルタントとして、中小企業支援及び指導、商業活性化事業、まちづくり事業等、顧客のニーズを的確に捉えた市場開発とアプローチ手法等、幅広い分野におけるマーケティング全般のアドバイスを全国各地で手掛ける。また、平成19年度より地域資源活用事業の政策審議委員、国会での参考人をはじめ、全国で地域資源を活用した事業推進、農商工連携事業、JAPANブランドプロデューサーなど幅広く活躍中。

  • 経済産業省地域中小企業サポーター
  • 同、伝統的産業工芸品産地プロデューサー
  • 中小企業基盤整備機構経営支援アドバイザー
  • 同、地域ブランドアドバイザー
  • 内閣官房 地域活性化伝道師
  • 同、クールジャパン地域プロデューサー
  • 広島県総合計画審議会委員 他


ページ
トップ