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もうけの羅針盤

食品業界で注目を浴びる鉄工会社!

鉄工会社の売上7割を占めるのは、なんと食品部門。自社の保有する技術を異分野に転用したことで、新たな事業が広がり、今やこの企業を支える主力製品にまで発展したという。<平成21年度制作>

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この知財の開発元

有限会社 瀬戸鉄工

広島県呉市川尻町上畑1068-4

http://www.yakiiriko.com/

電話番号0823-87-4147

開発ストーリー

瀬戸内特産のイリコ

食品業界で大変な注目を集める企業「瀬戸鉄工」

鉄工所でありながら、今や、全体売り上げの7割を占めるのは食品部門。その原動力となったのは、実は18年間ものロングセラーが続く、まるで紙のような煎餅だ。瀬戸内特産の"イリコ"を加工したものだが、その薄さ、なんと0.2mm以下。
開発のきっかけは、ある新聞の記事だったという。 『ボールを蹴っただけで骨折!』。この記事を目にした先代社長が、「カルシウムをたくさん含むイリコを何とか食べやすい形に変えられないか・・・」と思い立つことに端を発する。先代社長のモノづくりにかける情熱が、この煎餅を生み出したのだ。

プレス加工イメージ

自社の保有するプレス技術を異分野に転用

イリコをプレスしてみたら煎餅のようになった・・・。「食べやすい」カタチの手ごたえを感じ、開発が始まる。およそ2年の開発を経て誕生したのが「瞬間高温高圧焼成法」だ。1秒~3秒という短い時間で食材をプレスしながら、高温で芯まで焼き上げ、更にその成分を中に閉じ込めるという画期的な技術の開発に成功。

近年、更に進化を遂げ、広島特産の牡蠣や大豆、カボチャなど、硬質な食材や穀物などを大量にプレス加工する技術を開発。今や自社商品は50品にまで増えている。技術は益々進歩し、野菜などのデリケートな食材も鮮やかな色を残したまま加工することも可能となった。更に、「瞬間高温高圧焼成法」で加工した食材は、組織レベルが微細に裁断されることで、栄養分の溶出効果が高まり、同量の原料でも早く濃いダシを取ることが可能であることも判明。一石二鳥以上の商品が完成したのだ。

鉄工所で作られた食品

異分野である食品業界、販路開拓のために

"鉄工所"で、よい"食品"を作ることが出来た・・・。しかし、食品業界は未知の世界。
「一体どのようにして販路を広げていけばいいのだろうか?------」。

食品事業部部長の上田さん

異分野である食品業界、販路開拓のために

"そこで、食品事業部部長の上田さんが大切にしたのは、人との出会いだった。あるフレンチのシェフと出会ったことから、商品開発が飛躍的に展開。"イリコの煎餅"はどんどん進化を遂げ、地域ブランド、ご当地グルメ誕生へと発展、その活躍の場を広げていったのだ。平成21年1月には、国から「地域産業資源活用事業に係る認定」を受けた。
現在広島はもとより、北海道からも特産品を使ったお土産品の開発を手がけるなど、全国各地から試作品の依頼が相次いでいる。広島の小さな鉄工所の技術は、画期的な食品加工技術として、全国から熱い注目を浴びている。

成功ポイント

瀬戸鉄工さんの事例は、従来は鉄・樹脂のプレス成形が主力業務であったところを食材の加工へと転換したという、自社の保有技術を異なる分野に展開して新たな事業を創出した好例かと思います。

この異なる分野への展開に関しては、食品業界の方々との出会い、技術活用に対する気付きなど、さまざまなきっかけが関係しているのでしょうが、根底には「経営者の決断」がかくれていたものと推察します。従来と同じプレス成形技術を活用するにしても、元々は鉄・樹脂加工のための技術。これを食材に応用しようとすれば、当然従来の加工と混在はできないでしょうし、高価な装置を新たに調達しなければならないかもしれません。しかも、それでも うまく加工できる保証はなく、現場の作業者も難色を示したことでしょう。こうした不安材料がある中、食材加工に踏み出したことは、まさに「決断」だと言えます。

また、もう1つポイントがあります。それは出来上がった商品の効果を大学にて実証している点です。食品なので味が命ではありますが、味には好みもあり、設計図通りに製造・加工すれば買ってもらえるという世界ではありません。そこに対し、成分という定量的な切り口で分析を行い、味以外の付加価値を見出した点は、個人の嗜好によらず安定的な消費へ近づける取り組みと言えます。加えて、製造装置に関する特許も取得されて、他社が容易に真似をできないよう優位なポジションを固めておられます。

決断にはリスクが伴いますが、一旦決断した後は、その方向に進めるために常に改善・改良に対する取り組みを続けることは重要なことですね。

宥免 達憲 大学・研究機関担当者、IT・知財プロデューサー

宥免 達憲

大学・研究機関担当者、IT・知財プロデューサー

株式会社Lafla

NECグループ企業にて、十数年間にわたりシステム開発を経験。その後、数年間はコンサルティング会社にて新事業・新商品の開発、知財活用に携わり、2006年9月に地元広島にて独立。現在は、大学発ITベンチャー企業Laflaの代表も務める。