局からのお知らせ│新春座談会

地域未来投資で地域を豊かに

新たな分野に挑戦して未来を切り開く!!


2017年6月、「未来投資戦略2017」が策定され、我が国の強みであるものづくりの強さや社会課題の先進性等を生かせる戦略分野へ政策資源を集中投入し、未来投資を促進することや、地域の内外でヒト・モノ・カネ・データの結びつきを強化して圏域全体での成長産業や良質な雇用の創出を目指すこと等が打ち出されたところです。

また同年7月には、地域の特性を生かした成長性の高い新たな分野に挑戦する取組を支援する「地域未来投資促進法」が施行され、地域を牽引する中核企業等による地域経済の活性化を図るため、同法を活用した取組に向かう動きも地域でみられるようになってきました。

そこで今回の座談会では、独自のビジネスモデルや新分野への挑戦などで、地域を牽引する以下の企業経営者お三方にお越しいただき、波留 静哉 中国経済産業局長を交えて、地域特性を生かした先進的な取組などについて、話し合っていただきました。


株式会社キグチテクニクス 代表取締役社長 木口重樹 氏

株式会社MICOTOテクノロジー 代表取締役社長 檜山康明 氏

シグマ株式会社 代表取締役 下中利孝 氏


集合写真
写真左から、木口氏、波留局長、下中氏、檜山氏
これまでの取組やビジネス戦略
【波留局長】

本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。

今回の座談会では、地域において成長性の高い新たな分野に挑戦し、活躍しておられる企業経営者の方々にお集まりいただきました。独自のビジネスモデルや新分野への挑戦を通じ、地域を牽引する企業の皆様の先進的な取組についてお聞きし、広く紹介させていただこうと考えています。

それでは最初に自己紹介を兼ねて、これまでの取組やビジネス戦略について聞かせていただきたいと思います。まずは、金属材料の試験片作製から試験・評価までの一気通貫対応を強みとし、航空機産業への参入を目指す企業グループ「SUSANOO」(スサノオ)のリーダー企業であるキグチテクニクスの木口社長から、よろしくお願いします。



『高級特殊鋼を通じて培った加工技術を強みに、航空機分野に参入』(木口氏)

【木口氏】
写真 木口氏
木口 重樹 氏
(株式会社キグチテクニクス 代表取締役社長)
  • 1943年 島根県生まれ
  • 1968年 木口研磨所(現:(株)キグチテクニクス)に入社
  • 1984年 代表取締役に就任し現在に至る
  • 地域に集積する特殊鋼加工技術を中核に航空機産業の参入を目指す企業グループ「SUSANOO」のリーダー企業として中心的な役割を担う。
  • 島根県中小企業団体中央会常任理事、安来商工会議所会頭

創業時から蓄積してきた特殊鋼などの難削材加工技術を強みとして、およそ15年前に航空機関連産業に参入しました。今では航空機に携わる必要資格を全て取得し、材料試験片加工から材料試験まで自社で受注できる体制を整えています。また、第三者機関の試験場として認定され、国内でも有数の第三者試験機関としての地位を確立できました。2011年に中国地域ニュービジネス大賞をいただいたことも、キグチの名前を知っていただけるきっかけになりました。


安来地域には高級特殊鋼の大手メーカーの主力工場があり、その取引企業がたくさん集まっています。高級特殊鋼という難削材の加工技術と加工実績がありますから、その特性を生かして各社の連携・協同による相乗効果を狙い、航空機関連製品・部品等の一貫生産を目指して「SUSANOO」グループを立ち上げました。当初はそれぞれの企業で加工などを行う若者たちが中心になって立ち上げに関わっていたのですが、航空機の世界に入るためにはいずれ設備投資などいろいろな資金が必要になってきますから、各企業を代表する社長がメンバーに入らなければならないということになりました。加えて、航空機に一番早く取り組んだのが我が社だったということで、一応私が代表者になっております。


どこに頼んでもなかなか難しいといわれるものでも、メンバー個々の高い技術に加え、グループによる連携でワンストップのオーダーを完成させたいというのはもちろんのこと、島根県にこういうグループがあるんだと認識していただきたいという思いです。大手企業から受けたものを「SUSANOO」グループで一貫して作業を完了したいというのが狙いですが、なかなかそこまでいかないというのが現状です。



【波留局長】

続いて、山陰エリアの産学官金の医工連携により、医療・福祉用のロボット開発・事業化に取り組んでいるMICOTOテクノロジーの檜山社長、よろしくお願いします。



『人を再現した医療シミュレータロボット「mikoto」を開発』(檜山氏)

【檜山氏】
写真 檜山氏
檜山 康明 氏
(株式会社MICOTOテクノロジー 代表取締役社長)
  • 1994年 福岡大学卒業
  • 2000年 株式会社テムザックに入社し、ロボット開発・経営企画業務に携わる
  • 2014年 株式会社テムザック技術研究所設立、代表取締役社長就任
  • 2017年 株式会社MICOTOテクノロジーに社名変更し、現在に至る
  • 山陰エリアの産学官金の医工連携により、地域に医療機器・ロボット関連企業、研究者が集積することで、地域活性化を具現化することを目指している。

MICOTOテクノロジーの母体は、福岡県のテムザックという会社です。2000年に立ち上がったロボット会社で、レスキューロボットや警備ロボット、受付ロボットなど生活支援ロボットを開発しています。経済産業省のプロジェクトで2013年に、鳥取大学医学部附属病院と共同で医療機器の開発を始めたのがきっかけで米子に会社をつくりました。鳥取大学医学部附属病院が、院内に医療機器開発部門を新しくつくって、地元企業と一緒に医療機器を開発していくという時期でした。とはいえ地元に医療ロボットや医療機器を開発している会社がたくさんあるわけではなかったので、鳥取県の企業誘致を受け、2014年4月から操業を開始しています。


我々は、医療分野に特化したロボット開発に取り組んでいますが、一般的に大学との共同開発というと個々の先生と行うケースが多いのですが、鳥取大学医学部附属病院は組織を横断化して、複数の診療科で医療機器開発に取り組む、組織対組織で開発することができます。鳥取県は、医療機器開発を積極的に推進しており、個人の先生任せでなく組織的に開発できるというのは、鳥取大学、鳥取県の特徴です。人口最小県ですが、そのコンパクトさゆえに医工連携に地元金融も含めた連携もスムーズです。そういったおかげもあり、これまでにない、より人間に近い医療教育用シミュレータ「mikoto」(みこと)を完成させることができました。



まるで人のような医療教育用シミュレータ「mikoto」に内視鏡検査
((株)MICOTOテクノロジー提供)


【波留局長】

それでは最後に、自動車・産業用機械部品の製造からセキュリティゲートやレーザー傷検査装置など次々と新規事業開発を進め、また、産学連携によるロボット分野に取り組まれているシグマの下中社長、よろしくお願いします。



『独自性貫き、新分野を開拓』(下中氏)

【下中氏】
写真 下中氏
下中 利孝 氏
(シグマ株式会社 代表取締役)
  • 1956年 広島県生まれ
  • 1978年 株式会社下中工作所(現 シグマ株式会社)に入社
  • 1989年 代表取締役に就任し、現在に至る
  • ひろしま生産技術の会のメンバーとして「24時間365日無人稼働するスマートファクトリー」の実現に向けて取り組んでいる。
  • 一般社団法人日本自動車部品工業会理事、ひろしま生産技術の会幹事。

当社は過去、一社偏重の下請け賃加工の会社でした。極端に言えば営業もなければ開発もない状態で、このままでは全て他人任せということになってしまう。自ら考えて動く習慣がなければ機敏に動き回れないし、チャンスがきてもつかめない。それを変えなければいけないなというところから始まったんです。そこから最初に目指したのが「未来型企業」への変革ということでした。変革のステップとしてはまず、「独自技術と独自商品の双方を持ち、提案型の営業をもってして、アメーバのような組織運営のできる会社」というのが最初に目指したビジョンでした。成形の技術を生かして、プラスチック成形や樹脂成形、金型事業を始めました。そして次が「複合型未来企業」ということで自社商品をつくることになりました。そこで興したのがセキュリティ事業です。その次が「創造型未来企業」への挑戦ということになります。「新技術・新商品・新事業を常に生み出し、環境に優しく、社会に調和した会社」ということで、レーザー傷検査装置「穴ライザー」を生み出しました。現在は、「人型未来企業」への成長ということで、「多様な能力を持つ人が集い、輝き、働く」というのが2020年までのビジョンです。


元々が営業まで介さない会社でしたから、成長のためには「連携」が必要になってきます。私自身も目標を決めたらあとは全て手段だけだと思っていますので、まずは「何がやりたい」ということを明確にして、現状分析をするとギャップが出てくる。そのギャップをどう埋めるかが対策です。足りないものは学術機関や他の企業と組んでいくわけです。これまでにご相談した教授・研究者の皆さんは、どなたとして「そんなこともわからないのか」と言われた方はおられず、非常に親切丁寧に相談に乗ってくださいました。ですから、企業の連携と同時に、指導してくださる先生をみつけるということ、あとはやりぬくだけです。


最初のプラスチック成型も、世界NO.1を目指そうということで、加工技術の特化と、対象を航空機やロケットというふうに、その当時広島大学の先生にもお世話になって挑戦しました。が、これが究極の賃加工だということがわかってやめました(笑)。でも、その設備を利用してプラスチック分野に進出しました。我々は成形技術というのがキーテクノロジーなので、ある意味では当然の成り行きといえます。何かをなそうとした時に足りない部分はどなたかから教わるしかない、その繰り返しでここまできました。最近もロボットのビジョンシステムの開発や、レーザー事業のほうでもIoTやAIもやっていますが、みんな全部そうです。皆様から教わって成長していきたいと思います。

地域特性と取組に対する課題
【波留局長】

それでは次に、中国地域で事業を展開する中で、ご自身の経験から得られた地域の強みや、取組に対する考えなどお伺いしたいと思います。檜山社長からお願いします。



『コンパクトな環境から生まれた医工連携』(檜山氏)

【檜山氏】

鳥取大学医学部附属病院は、米子の中で非常に大きな存在で、それだけに地域への波及効果は相当なものがあります。鳥取大学は医療分野での飛躍を目指して先端医療はもちろんのこと、それに加えて医療機器開発を企業と連携して積極的に取り組んでおられます。余談ですが、最初は我々に医学的知識がないため、先生方の言われている医学的専門用語が分からず、まるで外国語を聞いているみたいでした(笑)。でも非常に親切丁寧に教えていただいて、開発に至りました。


あと、我々エンジニアは地元の米子高専のOBが多いのですが、高専の学生の多くは、卒業すると、東京・大阪・名古屋などの大手企業に就職しますが、30歳くらいになり、地元に戻って来たいという若い開発者もいます。鳥取県は、そういう優秀な人材を引き戻せるような開発型企業を誘致しようということで、我々が鳥取県に会社を設立しました。我々は研究開発型の企業であるため、自身が工場をつくって何百人も雇用を生むという可能性は少ないものの、開発型企業ができたことで、地元取引先の取引量拡大や新規事業への参入等、地域の経済への波及効果が期待できます。最先端のロボット開発というのは一見、都会でしかできないというイメージもありますが、鳥取だからできるというコンパクトさが働いて、産学官それに金融も含めての支援があるというところが特徴です。


我々のようなスタートアップ企業は資金調達というのは簡単でありません。やはり、開発資金であるとか運営資金、あとは人材確保といったところが課題としてありますが、こうした医工連携による医療機器開発の取組を地域の強みとして発信していくことが重要だと思います。もっと行政が、こういう取り組みをしている企業があると発信していただければ、全国で働いている地元出身の技術者が帰ってくるんじゃないか、集まってくるんじゃないかと。それが地域貢献につながると思っています。



【波留局長】

続きまして、下中社長、お願いします。



『広島のものづくり技術力を結集』(下中氏)

【下中氏】

当社も元々自動車メーカーの傘下にいるわけですが、特に中国地方、特に広島に限ると、ものづくり企業が、自動車あり、重工あり、建機ありと非常にたくさん揃っています。そういう点ではものづくりの環境としては恵まれており、脈々と続いていった技術の蓄積、クラスターというのがあるわけです。そのクラスターを利用して、我々は2006年「ひろしま生産技術の会」という会を立ち上げました。発足の時は3社で、ヒロテックの今の相談役が会長、私は幹事で、二人三脚でやってきました。何の規約も会費もありませんが、やりたいことは「もう一度、ものづくりの聖地・広島を」ということです。クラスターを利用して互いの知見を活用しあいながら、ロボットでは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の資金を使わせていただいて、「2017国際ロボット展」で、スマートファクトリーのミニチュア版を展示させていただきました。SIer部会やIoT部会などもあります。このような連携ができることで、地域に次の時代へ向けての準備ができて、またそこへ向かって達成していくという流れができることになると思います。



スマートファクトリーミニチュア版(ランダムピッキングシステム)
(シグマ(株)提供)

つまりは、「何をしたいか」という皆の目指すものを大切にして、そこを中心に互いの技術や知識を持ち寄れる状況なり、仕組みなりがあれば、もっともっといろんな形で伸びていくと思います。ロボットというのは全産業を横串にするようなものですから、次に目指すクラスターを中心として一つずつ発展させるといいますか、心から「こうありたい」と思う連中がうまく結びつくような形ができあがるといいと思うのです。「ひろしま生産技術の会」も、次々とアイデアが生まれ、良い動きになっていると思いますし、地域のクラスターも活用させてもらっています。



【波留局長】

それでは、木口社長、お願いします。



『「SUSANOO」を先導、島根の技術力を発信』(木口氏)

【木口氏】

難削材、特にニッケル合金の加工技術については、国内有数の技術力を持つ中小企業が多数集積していることが地域の強みです。また、我が社は、2017年度に島根大学の総合理工学部に金属材料を対象とした共同研究講座を設けさせていただいています。「島根県にもこういう素晴らしい企業がある、島根県としての地域の力は相当なものだ」と知ってもらいたいというのが一つの狙いです。


航空機の世界は、アメリカ・ヨーロッパがまだまだ中心で、日本では大企業でさえも下請けの仕事になります。我々の持つ優れた難削材加工技術を発揮して、大手の企業に「さすがだ!」と言ってもらえるようなものをつくりあげて実績を重ねることで、中小企業でも自分たちの力を見せることができると思います。島根の技術力を産業界に発信して、地域に貢献していきたいですね。「SUSANOO」グループはもとより、東京の「アマテラス」や岡山の「ウィングウィン岡山」などとも広域連携して、集積した企業の優秀なところを取り入れて飛行機をつくってみたいというのが私の思いです。

地域経済における稼ぐ力の好循環を生み出すための提言
【波留局長】
写真 波留局長
波留 静哉 中国経済産業局長
  • 1960年 鹿児島県生まれ
  • 1984年 通商産業省入省
    資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力立地・核燃料サイクル産業課核燃料サイクル産業立地対策室長、近畿経済産業局産業部長、大臣官房総務課企画官(自動車リサイクル担当)、大臣官房情報システム厚生課厚生企画室長、特許庁総務部会計課長など歴任
  • 2016年 中国経済産業局長に着任

それぞれ地域に根差し、他者との連携や協働を通して、環境変化にも迅速・柔軟に対応されているというお話をいただきました。

それでは次に、地域の特性を生かし、地域の内外で「ヒト・モノ・カネ・データ」の結び付きを強め、地域経済の稼ぐ力の好循環を生み出すようなアイデア、行政や地域社会に対するご意見・要望をいただきたいと思います。では下中社長、お願いします。



『地域に人を呼び込む仕組みを』(下中氏)

【下中氏】

過去、我々ものづくりの社会に共通する重要なものは、「ヒト・モノ・カネ・情報」と言っていましたが、今は全て「ヒト」だと思っています。企業においてもそうですし、地域社会においてもそうだと思います。人の活力が上がらない限りは地域の活性化はありえない。でも、例えば日本の高校生に、自分に価値があるかと問えば、6~7割が「ない」と答えます。よその国はそんなことないわけですよ。ですから自信を持てる環境をいかにつくり出せるかということも重要ですし、世界中からどれだけ優秀な人を招き入れることができるかも重要だと思います。企業も地域もそうです。そしてそういう人が来ることによってお金がついてくると思うんです。


今は、人をどれだけ集められるかです。シンガポールにしろ、マレーシアにしろ、急激な発展を遂げている。そういう点からいうと日本は、地域も含めて、色んな規制のせいか、また過去の成功体験から抜けられないのか、新しい世界に乗り遅れている現状に危機感を覚えます。イノベーション産業をどれだけ起こせるか、それはやはり人がなせる技ですから。


ここ最近、特に中小企業にとっては人材確保が厳しくなってきています。当社も同様ですが、新卒採用から通年採用に切り替え、なおかつ世界から採用しています。現在、技能系の社員として、海外というか異文化から採用した社員が7か国12人います。そういうメンバーが中国工場やインド工場の立ち上げや、さらにIoTやAIなどの部分も担い始めています。内訳も現地採用が3名、学徒採用が5名、中途採用が4名と、幅広く採用しています。


地域経済においても、やはり人をどれだけ連れてこられるかという政策が重要だと考えます。最近では世界的な傾向として、シリコンバレーがそうであるように、勤めるところと住む所が近くなきゃいけない。広島は、安全面も含めて職住近接の環境としても非常に良い所です。そういう点も含めて、地域に人を呼び込む仕組みをいかにつくりあげるかというのが、一番のポイントだろうと思います。



【波留局長】

それでは、木口社長、お願いします。



『航空機産業クラスターの広域連携を』(木口氏)

【木口氏】

「地域未来投資促進法」を上手く活用していきたいですね。私たちは、安来鉄工センターに12社入っていて、30数年経つのですが、みんな建屋がほとんど同じ状態でずっとやってきています。機械はどんどん更新されますし、新しいことを始めようとすると設備の増設・拡張が必要になりますが、工業用地がないのです。安来市により造成を検討されていた工業団地も2017年6 月に造成断念との発表がされましたが、工業用地不足を解消し、安来エリアに航空機産業の企業が集積できるよう、地域未来投資促進法を活用した適切な配慮をお願いしたいと思います。航空機産業クラスター同士の広域連携が図られるような取組を通じて、素晴らしい結果を見せて、こういう組織がこの地域にあるということを全国に知っていただく。それで幅広くいろいろなグループと交渉を持ちながら、飛行機に関しては日本が断トツだといえるぐらいになってほしいのです。



MTS社製疲労試験機((株)キグチテクニクス提供)

大手重工メーカーさんは、「航空機関連の仕事は出せるけど、10年間は儲かりませんよ」と言われます。それを聞いた途端、どうしても尻込みする人はおられます。だから10年間ついてこられるだけの体力とか、人材とかそういう全てのものが整った企業でないと、中小企業ではなかなかこの航空機の世界で残れません。それぞれが単独での自助努力をすることも大切ですが、個々の企業の力では難しいところもあります。当社は、公的研究機関や大手重工メーカー各社にも人材を出していますが、そういう人材交流とともに、中国地方としての広域連携をとり、地域に仕事や情報を呼び込む仕掛けや、全国の航空機部品サプライヤーによるオールジャパンの広域連携がとれる仕掛けづくりが必要と考えます。



【波留局長】

それでは、檜山社長、お願いします。



『地域から全国へ、情報発信』(檜山氏)

【檜山氏】

私は、社会人になって最初は証券会社に勤務し、色々な会社を見る機会がありました。その時から、日本がこれから成長していくためにはベンチャー企業、新しいことに挑戦する会社がどんどん出てくることが必要だろうと思いながら、ベンチャー企業に転身して以来、17年くらいベンチャービジネスに関わっています。その中で何が一番、地域や経済に貢献するかというと、最終的にはビジネスが成功することになると思います。ただ、成功に至るまでに革新的な技術で経営のリスクを負いながらも人がやっていないことをやるということがベンチャービジネスです。その過程において、情報発信・PR力というのは大事だと思います。開発する製品も、ただ新しいというだけではなくて、ビジネスとして成功するという要素が必要であり、かつ、インパクトが必要です。今回、人にそっくりな医療教育用シミュレータをつくったのですが、インパクトがあるとメディアの反応はとても良いです。先日東京で、「Health2.0 Asia – Japan 2017」という国際カンファレンスがあり、そこで最優秀賞をいただいたのですが、地元新聞に一面にカラーで掲載していただきました。新聞に掲載されたことで、行政、大学、取引先から予想もしない大きな反響があり、改めて、メディアの力の大きさを感じました。


我々は今、中国地方の各大学にも製品のPRを行っていますが、こういった医療用のロボットベンチャーが、鳥取県のこの地域で立ちあがっているということもあわせてPRすることもとても重要なんじゃないかと思うのです。知ってもらうことによって、仕事にも結びつきますし、人も集まってきます。成功までのきっかけのひとつになると思います。私は講演依頼などが来たら必ず受けて、どうやってプレゼンテーションして皆さんに伝えるかというのを考えながらやっています。そのような取組を行政企業共に発信することが大事なんじゃないかと思います。

将来の展望
【波留局長】

事業性の高い地域産業や良質な雇用の創出が、地域に投資や人材を呼び込む好循環の源泉となる、そういった仕組みづくりの重要性をお話いただきました。

近年急激に起きている「第4次産業革命」(IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット等)の波は、あらゆる産業や社会生活を劇的に変革する可能性を秘めています。

最後になりますが、皆様が今後、新たな取組とか、各社が抱いておられる将来的な展望について、お話しを伺えればと思います。こちらは木口社長からお願いします。



『社員が自信と誇りを持って働ける環境づくりを』(木口氏)

【木口氏】
木口社長

当社の個社としての取組だけでなく、「SUSANOO」グループ として地域の総合力が発揮できるような取組にしていきたいと考えています。例えば、人材や設備の稼働率が各社ごとに時期によって異なる状況で、柔軟に人材や設備の貸し借りをできるような仕組みがつくれるといいですね。それによって生産性の向上や、短期的人手不足への対応になると思います。長期的な人手不足への対応は、企業価値を高め、社員が自信と誇りを持って働ける環境をつくることに他ならないと考えています。


幸い我が社は、おかげさまで人材には困ることはなくなりました。でも、今一番頭が痛いのは、職場の人間関係が希薄になりつつあることです。昔の40~50人規模の木口研磨所時代には秀でた人はいなかったけれど、みんなで一致団結して頑張ってきました。ところが会社が少しずつ大きくなってきて、今200人近くになりますが、社員同士で名前を知らない人が多いんです。大企業ではありませんが、職場の人間関係の絆がちょっとずつ阻害されているような気がします。そこが一番のネックです。ヒト・モノ・カネ・情報といった時代もありましたが、今、本当にヒトの時代ですから。


それと働き方改革についてですが、それぞれのスタイルに応じて、5時間しか働きたくない人とか、10時間働きたいという人とかいますので、そういう個人の希望に沿って自由に労働できるような環境をなんとかつくれないだろうか、という思いもあります。例えば、当地域としては前例のない週休3 日制の実現や、逆にもっとバリバリ働いて稼ぎたいという人には、SUSANOO 内他社への派遣でしっかり働いてもらうなどの取組もアイデアとしてあります。会社にとっても社員にとってもメリットのある柔軟な働き方ができる体制をつくることは大切です。求職者から見ても魅力のある柔軟な働き方を実現することで、業界としての人手不足への対応のひとつとなると思っています。社員が満足して、地域社会からも認められる、そのような会社を目指してやっています。



【波留局長】

それでは、檜山社長、お願いします。



『鳥取発ベンチャーの成功例に』(檜山氏)

【檜山氏】
檜山社長

日本のものづくりのベンチャーは、世界に通用すると思います。我々がやっている医療教育用シミュレータというのはニッチな市場ですから、大手企業だと事業規模を考えると、なかなか入ってきづらいと思います。我々は、まず国内の病院、大学病院へアプローチしているのですが、同時並行で海外にも目を向ける必要があります。2017年10月に世界最大規模のシミュレーションセンターを持つ大学、アメリカのピッツバーグ大学に行きました。そこで言われたのが「日本のものづくり、フィギュア、ロボット技術はすばらしい」でした。また、先日、タイに行き、マヒドン大学という王立大学の系列病院で、大規模なトレーニングセンターをつくるという話がありました。日本だと1~3台程度しか置いてないシミュレータが、そこには10台20台設置される可能性があります。そのような可能性があるところにアプローチしていく必要があると思っていますが、我々は、海外展開に対しての人材がいるわけではありませんし、海外の病院でどれだけシミュレータが使われているかなどの情報自体もほとんど持っていません。ですので、国内と並行して海外展開を行うためには、海外に出ていくための情報収集、施策、人材確保が必要です。小さく成長するために会社をつくったわけではなくて、大きく成長させようとして会社をつくっているわけですから。世界を見据えてビジネスを展開することが必要で、やはり人材、海外への販路開拓、それに耐えうる生産体制やより新規の研究開発などが今後の課題ではありますが、地方だからこそ全国・世界へ発信していき、ベンチャー企業だからこそ、医療現場を変えるイノベーションを起こしたいと思っています。



【波留局長】

それでは、下中社長、お願いします。



『変革テクノロジーを社内に取り込み、更なる進化へ』(下中氏)

【下中氏】
下中社長

当社は色んな事業を抱えていて海外工場もあるんですが、基本的には小物の加工部品であまり大きな成長が認められる分野ではないかもしれないと、最初はそう思っていたんです。ところが、これを部品と思うか商品と思うかによって全くものの見方が変わってくることに気づきました。今現在は、我々の部品事業における目標とは、世界のマーケットにおいて成形技術による精密小物部品を「商品」としたトップ企業になるということです。提案した部品を商品に変える企画力や営業力、我々のキー技術である成形技術で、小さなマーケットを独占して、アイテム数をたくさん持って取り組んでいこうと思っています。2014年の「グローバルニッチトップ企業100選」にも選定されましたが、部品事業における考え方で、多くのアイテムを持つということにつながっています。


現在、24時間365日無人稼働のライン・工場を実現させることが大きなテーマになっていますが、その実現に向けた取組の方向性を整理したものが「シグマのモノづくり断トツ5」という考え方です。1番目はシグマ独自の高効率の専用設備の開発、2番目が独自ロボット利用技術とロボットの開発。3番目が検査の簡素化・自動化。4番目がライン管理とメンテナンス技術の高度化。最後の5番目はモノづくりプロセスの最短化です。


今後、ドローンとか自動運転などを含むロボット、RFID、IoT、AIが社会に大きな変革をもたらします。我々のものづくりそのものも変わってきます。それをひっくり返される側ではなく、むしろ積極的に取り込んでそれを利用する方向に転換しようということで、この4つの変革テクノロジーの徹底的な社内取り込みを図っているところです。


例えば、ロボットも開発と同時に、生産技術部門でなく、現場自身でロボットを導入していくというやり方をしています。レーザー検査の方は、ロボットタイプのものはすでに販売していますし、2018年2月にIoTバージョンを出します。AI化も進行中です。セキュリティ部門では、店舗などで使うRFID用のゲートやマットレスタイプは開発が完了しました。2018年に店舗用の監視ロボットをつくる計画もあります。あらゆる分野にITが持ち込まれている今、部品事業については、ハード化対応だけでなく、部品販売の前段階でどれだけサービス化できるかも重要なポイントになってきます。


我々は、世界シェアを取るために中国工場とインド工場を用意しました。この2つを押さえていれば、多分世界市場の2~3割ぐらいを取って、そのまま進めるんじゃないかと考えています。ですから我々は苦労しても合弁の道は全く選びませんでした。これから世の中がどうひっくり返っていくのか見えないながらも、試行錯誤しながら、みんなで頭を悩ませながら今進めています。

おわりに
波留局長
【波留局長】

近年の新しいイノベーションの登場がこれまでにない革新的なビジネスやサービスを次々と生み出しています。そのような中、人手不足に直面するも人材への投資やIT・ロボットの活用により、現場の創意工夫を引き出し、付加価値や生産性を高めるための不断の努力がそこにあるということ。こうした色々なお話を伺って、各地域でそれぞれ特性を生かした、成長性の高い新分野に挑戦する取組が行われていることを改めて実感しました。また、皆さんが正に地域のリーダーとして周りを引っ張っておられる、それこそが地域の大きな活力になっていると感じました。今後、そういった取組に対する有効な政策を総動員して集中的に支援してまいりたいと思っていますので、地域の皆様にもご活用いただければありがたいと思います。


お話を伺った各社は、平成29年12月22日、地域経済を牽引する担い手となる地域の中核企業として、経済産業省から「地域未来牽引企業」に選定されました。当局においても、「地域未来投資促進室」を新設し、ワンストップで企業からの相談や問い合わせ等に対応する支援体制を整備しております。引き続き、中国地域経済の活性化のため、地域経済を牽引する事業に取り組まれ、大いに地域経済を牽引して頂きたいと期待しています。


本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。


写真 座談会の様子

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2018年1月31日掲載

Copyright 2018 Chugoku Bureau of Economy,Trade and Industry.

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