局からのお知らせ

現場・現実・現物に応じたIT・IoT導入に向けて

IT経営力向上セミナーを開催しました

地域経済部 参事官
(情報・ヘルスケア産業担当)
電話:082-224-5630
FAX:082-224-5765

政府は、2017年6月に「未来投資戦略2017」を閣議決定し、IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどのイノベーションをあらゆる産業や社会生活に取り入れ、様々な社会課題を解決する「Society 5.0」の実現に向けた施策を打ち出しました。

経済産業省においても、2017年5月に「新産業構造ビジョン」を策定し、第4次産業革命の波に乗り、日本が強みを活かしつつ、「Connected Industries」の考え方によって世界の先頭に立って産業を引っ張っていけるよう、新産業構造ビジョンの実現を目指しております。

この第4次産業革命により、産業・社会構造が劇的に変化する可能性がある中、IT・IoT導入が経営力向上の1つの鍵となりますが、IT・IoTの導入が目的となっており、真に経営力向上に繋がるIT・IoT導入に至ってないことも多いのではないでしょうか。

また、中小企業にIT・IoTが導入されていない要因の1つに、「技術が難しくてよくわからない」、「自分の会社にどのようなメリットがあるのかよくわからない」という問題もあります。

今後、IT・IoTは更に重要視され、社内の業務効率化・コスト削減を中心とした『守りのIT経営』のみではなく、IT・IoT利活用による企業の製品・サービス開発強化やビジネスモデル変革を通じて新たな価値の創出やそれを通じた競争力の強化を目指す、いわゆる『攻めのIT経営』を営む必要があります。

今回はその様な『攻めのIT経営』について皆様にもっと知って頂くとともに、『攻めのIT経営』を実践して頂くため、中国経済産業局が広島市内にて行ったIT経営力向上セミナーの内容をご報告します。


中国経済産業局では、2017年11月16日(木)当局第1会議室(広島市中区)にて、IT導入の活用に成果を上げている中小企業のベストプラクティスや現場・現実・現物に応じたIT・IoT導入のポイントなどを紹介するセミナーを開催しました。

IT経営力向上セミナーの写真
  • 開催日時
    平成29年11月16日(木)
    13時30分~17時00分
  • 開催場所
    中国経済産業局 第1会議室
    (広島市中区上八丁堀6-30)
(開会挨拶)
中国経済産業局
閑田参事官

開会挨拶の後、富士通株式会社 高鹿初子 氏による講演がありました。

講演では、富士通のIoT、AIを活用したものづくりの取組と、産学官の取組であるロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)やインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)で、中小企業と一緒に進めている現場・現実・現物に即したIT・IoT導入の可能性やポイントなどを分かりやすく紹介頂きました。

続いて、2017年5月31日に「攻めのIT経営中小企業百選」として選定され、中国地域で攻めの分野でのITの効果的な活用に積極的に取り組み、成果を上げている企業3社の経営者からベストプラクティスを紹介頂きました。

安田精工株式会社は、「金属プレス用」、「プラスチック射出成形用」双方の金型を社内で手掛ける金型総合メーカーとして、2009年元気なモノ作り日本の中小企業300社に選定されるなど、高度な金型製造技術を保有する企業です。セミナー当日は、上流工程である設計から中・下流工程の機械加工・組立試作調整に至る3部門で、仕事期限を最大限見える化し、リードタイム20%削減、納期遵守率100%を維持するなど、攻めのIT経営に係る取組を中心にご紹介頂きました。

株式会社英田エンジニアリングは、冷間ロール成形機・造管機、コインパーキング関連機器、破砕機・粉砕機用刃物等の環境関連機器など多角的な事業展開を行っており、世界初の革新的冷間ロール成形機で2015年第6回「ものづくり日本大賞」優秀賞を受賞されるなど、高度な技術を保有する企業です。セミナー当日は、無人駐車場機器の遠隔操作・遠隔管理について、遠隔管理を前提とし、収集すべきデータをよりきめ細かいものに見直すことにより、過去5年間の全体売上高伸び約1.1倍、コインパーキング事業利益率約2.5倍を実現するなど、攻めのIT経営に係る取組を中心にご紹介頂きました。

倉敷青果荷受組合は、青果物の荷受、洗浄殺菌カット野菜の製造、販売などを行っており、2009年に卸売市場業界では日本初となるISO22000食品安全マネジメントシステムの認証を取得されるなど、地域と共に発展している企業です。セミナー当日は、消費者ニーズに対応した「カット野菜事業」について、カット野菜事業生産管理システム、卸売事業見積システムの導入により、3割超えの契約社数増加、過去5年間の全事業部合計売上高の伸び約1.4倍などを実現するなど、攻めのIT経営に係る取組を中心にご紹介頂きました。


最後に、中国経済産業局より、現在進めている経済産業省におけるIT推進政策や情報セキュリティに係る取組について報告しました。

本セミナーでは、『攻めのIT経営』に関心のある企業・団体の方々が85名出席され、講演内容に熱心に耳を傾けていました。

講演『富士通のものづくりと中小企業でのIoT活用ご紹介
-産学官での中小企業のIoT活用の取組み-』

[講師]

富士通株式会社 ものづくり
ビジネセンターものづくり
プロモーション企画部
マネージングコンサルタント
一般社団法人インダストリアル・
バリューチェーン・イニシアブル
クロスインダストリ委員長
高鹿 初子 氏
写真 高鹿 初子 氏
  • 2年前は、IoTで何が出来るのかという相談が多かったが、去年から今年にかけて何となくIoTで出来ることが少しずつ分かり、IoTを活用してみるという動きが出始め、それにより、成果が出始めている。
  • その一方で、未だにIoTの活用をどうしようかと立ち止まっている企業もおり、2極化が進んでいる。
  • 富士通が考えるものづくりとは、IoTで情報を集め見える化し、それをうまく活用し改善していく、この改善サイクルを素早く正確に行えるようにしていくことを目指している。
  • IoTはツールなので、集めたデータをどのように活用するのかが重要である。富士通では、集めたデータをロジカルに活用出来るようにAIを活用している。例えば、画像を使った外観検査などに活用しており、機械学習による画像認識プログラムを自動生成することも行っている。
  • 富士通は、ものづくりを行う多くの企業を繋げて行き、様々な意見を取り入れながら新しいものづくりを行う場として「COLMINAイノベーション・プレイス」の立ち上げを検討している。
  • IoTを活用している企業の事例として、自ら、旧機種の安価なスマートフォンに内蔵されている加速度センサーを機械に取り付けて機械の稼働情報を収集してWebプログラムに連動させることや汎用の光センサーや磁気センサー等を安価に購入することなどにより、システム開発している企業などを紹介。
  • IoTの活用により、工場ラインの稼働状況、部品の製造時間などが見える化でき、これにより作業改善を行い、生産性を向上させている。
  • また、発注企業が機械加工・熱処理・研磨・メッキ工程をそれぞれ別の企業に発注していることから情報共有が上手く出来ていなかったものが、RFIFを活用し、受発注・進捗情報をクラウドで共有することにより、生産性を向上させている。
  • 工場は、ものが流れ製品が出来、出荷される。それぞれの工程の間には色んな滞留があり、IoTにより今まで気が付かなかったものが沢山見えるようになり、宝の山(改善活動など)を見つけることが出来る。
  • IoT導入は、①自社でやる、②自社とITベンダーやITコーディネーター等の専門家と一緒にやる、③専門家に頼むという方法があるが、自社だけ悩んでいるよりも、一緒に出来るところ相談することで解決策が見つかることもあり、まずは一歩踏み出してみることが重要である。
事例紹介『攻めのIT経営中小企業百選」選定者からの取組紹介』

[講師] 安田精工株式会社 代表取締役社長 安田 和雄 氏

写真 安田 和雄 氏
  • もともとは、白物やオーディオ機器等家電製品の金型を製造していた。
  • 金型メーカーは受注中心であるため、出来るだけ多くのお客様とお付き合いしていく必要があり、そのような背景から1980年代に自動車関連企業からの受注を増やしてきた。
  • 家電製品と自動車では、全く納期サイクルが異なり、更には時代とともに部品の複雑化、寸法精度の厳格化、短納期化、最大顧客20社の同時並行作業など生産工程が複雑化していき、このことからも、10年前から、アナログで管理している時代ではないと感じていた。
  • 金型の製造工程は、営業から始まり、設計、製造、組立、トライアル、納品という流れであるが、各部門のサーバを一元化し、機械加工の進捗情報などをデータとして取り込めるようにした。
  • 具体的には、設計者の「背番号」管理、部品製造工程と加工時間数の見積りによる工程数管理、各主要機械を駅と捉えた「時刻表」管理、毎夕の日産(残工数)管理を複層的に行うことにより、営業が現場で一つ一つ進捗状況を確認する必要がなくなるなど各部門共通で上流工程から中・下流工程の見える化を行った。
  • ITを取り入れ5年経つが、漸く現場と管理者がお互いに向き合っていく形が出来上がった。毎年CS調査を実施しているが、納期の評価が5段階評価で3から4に着実に上がっており、一歩ずつながらもその成果が出てきている。

[講師] 株式会社英田エンジニアリング 代表取締役社長 万殿 貴志 氏

写真 万殿 貴志 氏
  • フォーミングロールの製造工程は、全14工程あり、その多くが機械加工である。そのため、現場で図面が汚れて読めなくなることによる不良発生や製造が終わった段階で図面を廃棄するので紙が無駄になるということから、まずは、PCを現場に配備し図面を電子化することによるペーパーレス化を行った。これにより、読み間違いによる不良が殆ど発生しなくなった。
  • また、工程管理、作業日報など手書きで行っており、工程数が多いことからも、従業員に多くの負荷がかかっていた。このため、工場と事務所を無線でデータの送受信を行い、作業者がハンディターミナルでバーコード入力することにより、作業日報を作成する必要がなくなり、作業実績もリアルタイムで分かるようになった。これにより、作業工数約30%改善や作業能力の向上を図ることが出来た。
  • このフォーミングロールでのIT化の取組を活かし、コインパーキング事業へ展開した。
  • コインパーキング事業の課題として、トラブル対応と赤字事業地対応がある。1ヶ月当たり約850件のトラブル対応により、必要に応じてメンテナンス員が現地に出向かなければならなかった。赤字事業地では、営業マンや運営管理の従業員が現場に行き、何日もかけ調査し改善策を施していた。また、機器側についても、一般的なフラップは下降した状態でも突起物があるため、駐車する妨げになっており、利用者を転倒させる恐れなどもあった。
  • このため、駐車場精算機の情報をWebにより会社内PCと送受信を行えるようにした。これにより、売上データ等を日々タイムリーに収集することによる多角的な分析や、事前にポイントを決めて現場に出向くことにより短時間での正確な判断が出来るようになった。また、精算機からの異常状態が発生した場合、精算機からメンテナンス員に自動通知することにより、早期のトラブル対策も可能になった。
  • ゼロフラップは、フラップがアスファルトと同じ高さまで下降し、地上での突起物がなくなるため、駐車場利用者の利便性・安全性の向上を図ることにより駐車場でのトラブル減少、フラップの安全な遠隔操作が可能となった。これらにより、売上の向上及び作業工数の削減を実現した。

[講師] 倉敷青果荷受組合 理事長 冨本 尚作 氏

写真 冨本 尚作 氏
  • 卸売業界は、1990年, 1991年を境に、売上高が30~40%低下している。
  • 野菜需要については、単身世帯の増加、女性の社会進出、高齢化など生活スタイルの変化により、食の外部化(外食・中食の増加)が進み、加工・業務用需要が増加している。この変化する消費者ニーズにいち早く対応していくため、1998年にカット野菜部を立ち上げた。
  • この野菜需要の変化に対応していくためには、一番市場が苦手とする分野である4定(定時・定量・定価格・定品質)の実現、国産野菜使用への要望に応える体制、食の安全・安心を実現させる必要があった。
  • また、過去には、お客様の受注の集計にかなりの時間を要し、その集計した資料を生産現場に渡し生産していたが、伝達ミスなどにより、受注と生産が一致しない状況も発生していた。
  • これらの課題を解決するため、受注管理・生産管理・ピッキングシステムを導入した。Web、FAXなどでお客様からの受注を受注管理システムで製品別に集計し、そのデータを生産管理システムに送信する。これにより、生産現場では、タッチパネルで集計された資料を確認して生産に移行出来るなど、作業指示、作業進捗、野菜の歩留率の見える化を行うことが可能となった。
  • また、ピッキングシステムにより、出荷段階に重い製品が下にくるような仕分けを実現させるなど、これらのシステム導入により、利益や売上を向上させることが出来た。
報告『経済産業省におけるIT推進政策』
  • かつて日本企業は、「縦」から「横(プラットフォーム)」への変化に追従できず、更に現在では、レイヤー・分野を拡大し、メガ・プラットフォーマーを目指す企業が出現してきている。「新産業構造ビジョン」で示したConnected Industriesは、グローバル競争も見据え、「モノ」から「サービス」へというビジネスモデルの変革を明確に認識するための有効なコンセプト。これを手がかりに、既存のビジネスモデルからの変更を加速することが重要である。
  • 2015年10月に産学官でIoT利活用を促進するためIoT推進コンソーシアムを設立し、その傘下に、「技術開発WG」、「先進的モデル事業推進WG(IoT推進ラボ)」、「IoTセキュリティWG」、「データ流通促進WG」の4つのWGを組織し、技術開発、利活用、政策課題の解決に向けた提言等を実施している。IoT推進ラボでは、資金支援・メンター支援、規制改革支援を実施する先進的IoTプロジェクトの発掘・選定するIoT Lab Selectionの取組などを展開している。現在、第5回IoT Lab Selectionを募集しているが、新たに地域枠を設定、IoT、ビッグデータ、人工知能等を活用し、地域固有の課題の解決や地域経済の活性化に寄与するプロジェクトを募集している(募集締切2017年12月15日12時)。是非、積極的に応募してほしい。
  • 攻めのIT経営へ向けて、「攻めのIT経営中小企業百選」などIT活用のベストプラクティスを選定し、攻めのIT経営波及に向けた取組を行っている。また、当局でもIT・IoTの導入を促進するため、中国地域の中堅・中小企業におけるIT・IoT導入モデル創出に向けた調査を行い、①専門家チーム編成、②問題提起・課題発掘、③IT・IoT導入の必要性検討(解決策の検討)、④IT・IoTシステム導入手順作成、⑤導入効果・費用対効果試算などIT・IoTシステム導入に向け、IT・IoT導入企業、地域ITベンダーが真に活用出来るロードマップを作成している。
  • IT人材は、2030年には、約79万人不足すると推定されており、IT人材の育成が不可欠である。また、第4次産業革命によって、付加価値を生み出す「仕事」も大きく変化する。このため、未踏IT人材発掘・育成事業やセキュリティ・キャンプなどの実施により、ITイノベーション人材や高度IT人材の育成の拡充、ミドル人材のスキル転換、教育現場の底上げ等の取組を進めている。
  • IT利活用の拡大に伴い、サイバー攻撃の脅威も増大している。IT利活用を推進する上で、情報セキュリティが重要なことから、その脅威やセキュリティ対策をまとめたガイドライン等(サイバーセキュリティ経営ガイドライン、IoTセキュリティガイドライン、中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン等)を策定している。中小企業の方は、是非、中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインを参照してほしい。

『IT経営力向上セミナー』はいかがでしたでしょうか。『攻めのIT経営』の取組については、まだまだ浸透する余地があると思われます。

当局としても、第4次産業革命に対応していくため、これからも引き続き『攻めのIT経営』の取組が今後益々進むよう、このようなセミナーの開催やIT・IoT活用を支援する事業展開などで、IT・IoT利活用に取り組む企業やそれをサポートする機関を応援していきたいと思います。

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2017年12月8日掲載

Copyright 2017 Chugoku Bureau of Economy,Trade and Industry.

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