エッセイ│てくのえっせい 381

庶民派和食のお握りとふりかけ

顔写真

広島工業大学名誉教授
中山勝矢

広島市内と空港を往復するバスでは、いつも最前列の席に座り、運転席の上に取り付けてある車内のビデオ画面を見ています。いろいろと内容に工夫があり、面白いのです。

先日は「ふりかけ」で、やや太り気味の男の子がふりかけをたっぷりご飯にかけて食べた後、続く遠足の場面では、飛び跳ねるように歩いているのが印象的でした。(写真1)

(写真1)リムジンバスの車内のビデオ画面で見たふりかけの商品広告(よく太った子が白いご飯にふりかけをたっぷりかけて食べている。)

ふりかけは元気の素というのが趣旨でしょうが、わが国で広く馴染まれている白いご飯とふりかけを、庶民派の和食として改めて訴えているようにも感じました。(写真2)

(写真2)白いご飯のお握り(フレーク状の塩鮭が載せてある例。)
栄養補助食品

ところでお赤飯には、ゴマ塩をかけてもふりかけはかけません。暗黙のルールがあります。相性の問題かもしれませんが、原則ふりかけは白いご飯にかけ、お握りに混ぜます。

お握りはいまでは立派な商品となり、コンビニやスーパーなどで広く売られています。空腹を軽く満たすものとして、またランチとしてサンドウイッチ並の商品です。(写真3)

(写真3)コンビニやスーパーの棚に並ぶ見栄えのよい最近のお握りやふりかけ(湿らないようにポリマーフィルムで保護された海苔を出し、お握りを包んで食べる。その際にふりかけを足してもよい。)

調べてみると、このふりかけは日本生まれの食文化らしいのです。米を主食にする地域は、世界に少なからずありますが、乾燥した補助食品は珍しいのではないでしょうか。

ふりかけは鎌倉時代まで遡れるようで、「厨事類記」にはタイ、サケ、サメなどの肉をほぐして塩干にした「楚割(すわり)」や「はなかつお(花鰹)」の記載があるといいます。

最初は多分、削り節程度のものだったと思われます。ふりかけに先行するモノとして、ご飯に添える佃煮、田麩(でんぶ)なども挙げることができるかもしれません。

ところが今日のふりかけの歴史は比較的浅く、百年ほどのことだと、ふりかけ大手の三島食品㈱は説明しています。しかもそれは、何と栄養補助食品として生まれたのでした。

大正の初期、熊本の吉丸末吉さんという薬剤師の方が、日本人のカルシウム摂取量が少ないことを心配し、小魚を姿のまま乾燥して粉末にすることを考えついたとあります。

脚気の原因が白米にあると分かったのと同時代です。脚気が細菌による病気ではなく、精米でビタミンBを含む糠を捨て去っていたためだと分ったのと同じ流れにあります。

ふりかけの商品化のため、まず魚臭を消し、さらに魚ぎらいも食べられるように調味料、煎りゴマ、ケシの実、海苔、卵を加えるなど、幾多の工夫を重ねて今日があります。

美味しいジャポニカ種のお握り

世界で米を主食にする地域は意外と広いのですが、握って美味しいのは日本米やカリフォルニア米が属するジャポニカ種で、パラパラのインディカ種では握れません。

ジャポニカ種の白いご飯はほのかに甘みがあって美味しく、炊いて握ればしばらくは保存できます。古くは竹の皮に包んで携行しました。

前夜泊まった宿で、お握りを竹の皮に包んでもらい、それを携行食として腰に提げて旅を続けるのが普通でした。さらに災害時の炊出しでは、いまでもお握りがおなじみです。

ただカルシウムや塩分に欠けるところが難点でした。味付けをした魚粉をベースに調整したふりかけは、栄養補助食品として合理的なので、広く社会に受け入れられたのです。

お握りとふりかけは相性がよく、軽くて救難用や携行食には理想的です。防災用に備蓄するのであれば、アルファ米だけでなく、ふりかけも忘れない心がけが必要に思えます。

ところで、かつては飲み会の帰りは決まってラーメンでした。今では終わりが近づいた頃、ママが気を利かせてラップに包んだお握りを出す店が増えました。

いつ客が食べてもいいようにと小奇麗に作ってあるので、可愛いデザートのように見え、つい手が出てラップを剥き、口に放り込むという庶民的な場面となります。(写真4)

(写真4) 飲み会で最後にバーのママがサービスに出したお握り(だしが効いた茶飯のお握りに、グリーンピースが入っていた。)

こんな口当たりが良くて手軽な食品は世界で珍しいのではないでしょうか。まさに日本生まれの庶民派の和食だといえます。ふりかけを混ぜた味は絶妙で、とくに喜ばれます。

すしやカップ麺が世界商品になっています。電気炊飯器もよく売れています。手軽なお握りも、世界的商品になってもおかしくありません。立派な料亭の和食だけでなく、こうした庶民派の和食も前へ出て欲しいものです。

※写真は全て筆者撮影

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経済産業省 中国経済産業局 電子広報誌

ちゅうごく地域ナビ 2018年7月2日掲載

Copyright Chugoku Bureau of Economy,Trade and Industry.

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